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  • 2009/10/07 掲載

「デモシカIT」から「これこそIT」へ:中堅・中小企業市場の解体新書(5)(2/2)

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いい加減「ハコモノ」提案はやめるべき

 「これこそIT」の代表例は戦略的ITと称される概念のシステムは数々あるが、以下に02年と09年の7年間でどう変化したかを列挙しよう。


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1.グループウェア
グループウェアは、49.4%から65.6%へと着実に導入が進んでいる。ネットワークインフラの整備とシンクロして導入が進んでいることがわかる。

2.ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)
業務システムを統合しデータの一元管理を行い、バックオフィス業務を包括的に管理することで、企業トップの意思決定が迅速化をサポートする。ERPは2002年は19.4%、2009年で22.1%の導入率だ。期待はされつつも大きな導入が進んでいない。7年間でわずかに約3ポイントしか増加していない。

3.SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)
部材調達、生産から流通、販売、回収までの一連の製品フローを俯瞰的に管理する規模の大きなソリューションとなる。SCMの導入率は2002年の4.1%から2009年の8.5%へと倍増にみえるが、1割未満の導入率に過ぎない。

4.SFA(セールス・フォース・オートメーション)
営業活動に必要なセールスサポートをリアルタイムに行う。顧客との営業活動中に顧客の現状の購入履歴を確認したり、在庫情報をその場で確認したりできる。あればとても便利と思われていながら、導入が進んでいなかったソリューション。SFAは2002年8.7%から2009年14.9%へとやや導入率を高めてきている。

5.CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
顧客情報などを有効活用するための最もコアな役割を果たすソリューション。SFAやCTIなどを抱合している場合も多い。セールスフォースドットコムなどはこちらに分類されることもある。導入率は8.0%から11.3%へと、SFAと同様に2桁に乗せたが、まだ大きな導入率とはいえない。

6.CTI(コンピューター・テレフォニー・インテグレーション)
電話とコンピュータとのフュージョンタイプのソリューション。CRMの1つの形態とも言えよう。もっぱらコールセンター業務などでは用途は進んでいる。導入率は7.7%から7.9%へとほとんど変化が無い。

7.ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントは、ヒューマンスキルやナレッジをシステムで共有したり継承、伝達するべき役割を担っている優れたソリューションだが、導入率は4.3%から10.0%へとかろうじて2桁の導入率だ。

 このようにいわゆる「これこそIT」のような“戦略的用途”なITは極めて低い導入率に留まっている。そもそも“戦略的用途”というものが、現在の日本を賑わしている「ハコモノ」のようなパッケージ製品で実現できることに大きな疑念があり、ソリューションが戦略的であるのではなく、運用する主体が戦略的であればこそ、ツールとして活用するITが戦略的に機能しているということになる論理は誰の目にも明らかであるはずだ。

 その他にも、SaaSやクラウド、SOAなどいろいろあるが、要素技術やインフラ、概念なので、あえてここでは触れない。ただしBI(ビジネスインテリジェンス)などはCRMなどと関連して極めて重要なソリューションといえる。ただ中堅・中小企業向けへの真剣なアプローチがほとんど見られないのが残念だ。正確に言えば、中堅Mクラス(年商100億円)以上へは導入を進めてきている程度だ。

 「小さく入れて大きく育てる」とか「身の丈にあったIT導入を」という美辞麗句に惑わされてはいけない。現状の経済環境下で、絞りに絞って、本当に自社にとって必要な事業のコアは何か、それにとって必要なアシストする要素、ツールは何か、そしてその役割に見合ったITは今自社にないのか、あるが使いこなしていないのか、必要ないのかなどの厳しい目を持って見直すべき時期に入ってきている。

 「デモシカ」や「とりあえず」のようなITは必要ないし、しかもそんなお粗末な提案しかできない販売店やベンダとの関係性は、冷静に見極めなくてはならない。企業は、IT担当者だけでなく、経営者が一歩踏み込まなくては、この状況を変革することは難しいだろう。

 “スマート”という言い方は、中堅・中小企業に響かない視点なので支持しにくいが、悩みを共有できて、解決するための提案をしてくれる販売店、ベンダはいつの時代も不変の存在である。

 販売店に言いたい。いい加減「ハコモノ」提案はやめるべきだ。企業はどうやって売上を伸ばすか、顧客を増やすか、事業コアに関わる話をできる相手を望んでいることは明らかなのである。経営者に響く提案を心掛ける時期は今しかないだろう。

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