- 2009/10/08 掲載
【セミナーレポート】ノーツユーザーが抱える課題を、いかに解決できるのか。その最適解を探る
9月11日開催 ノーツマイグレーションセミナー開催レポート
棚卸を行うべきだ
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同氏はまず、ノーツは優れた製品だったと前置きしたうえで、多くの企業がノーツを使って理想のワークプレイス環境を構築する試みが行われたが、その大半が失敗に終わったと指摘した。ノーツの活用頻度は減少しているが、運用管理コストは高まっていることにも、ユーザーは不満を感じている。特に問題なのは、ノーツサーバとWebシステムの親和性の低さで、Webサーバとしてのドミノのパフォーマンスにも疑問符をつけた。また、他の基幹業務がWeb化される中、グループウェアだけが統合できない弊害もあると指摘した。
同氏は「個別の機能では、ノーツよりも性能や使い勝手で優位性があるWebベースのシステムが多いのです。従って、社内情報システムの全体像を把握し、ノーツから個別の機能を切り出して、Web系のシステムへの移行を考えるとよいでしょう。自社の目的や個別のニーズに合わせて、機能単位に優れた使いやすいオープンなパッケージを採用し、既存のコンテンツを移行します。長期的なゴールとしては、個別機能に優れた各アプリケーションをWeb上で統合するとよいでしょう。いったんノーツのいい部分を残すという選択肢もあります」と話した。
ノーツの移行について「一番のポイントは既存資産」と同氏。既存資産の棚卸が必要になる。まず資産が本当に使われているかを確認すること。その上で、残す資産は移行しなければならないが、移行のコストは高くなる。しかも移行は何も生まない作業であることを考慮に入れて、棚卸を行うべきだとアドバイスした。
最後に同氏は「やりたいことが明確なのであって、やりたいことができるツールを見つけたのなら、他のシステムの連携を含めて全面移行することをおすすめします。やりたいことが明確でなく、仕事のやり方も変えたくないのなら、思い切ってノーツを塩漬けにする手があります。サポートが切れると心配だいうユーザーがいらっしゃるが、安心料に何億も払う必要はありません。最悪の選択は、迷っているうちに時間切れでバージョンアップすることです。結局、既存資産の莫大な移行コストが発生し、そこから何も生まれません。しかも移行した後のチェックはユーザーがやることになるのです。固定観念にとらわれず、フラットな広い目で見て判断していただきたいと思います」と述べ、講演を締めくくった。
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田村氏は、同社が経験した2つのノーツ移行プロジェクトについて、概要とその経験から学んだTipsを紹介した。
1つめのプロジェクトは、ノーツ R5を使用していた顧客のケース。ノーツ R5の問題(サポート切れ、クライアントが落ちる、Vista非対応など)、ハードウェアの老朽化による障害発生や慢性的なディスク容量不足、ノーツ DB数の増加、レスポンスの低下が課題だった。もう1つのプロジェクトは、ノーツ 6.5(Web)を使用していた顧客のケース。サポート切れ、サードパーティ製漢字アドレス帳のサポート切れ、ドミノサーバの停止の増加などが課題だった。前者のケースは、最適製品の組み合わせ(ドミノ WebとPortal製品など)に移行され、後者はWebグループウェアとWebデータベースの組み合わせに移行された。
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これらの移行プロジェクトの経験から得られたTipsとして、同氏はまず、目的を見失わないことをあげた。同氏は「ノーツを止めることが目的ではありません。コスト削減や安定稼働が目的ならバージョンアップでも効果はあります」と述べた。また、データの移行範囲が移行コストに直結する点について「結果としてバージョンアップするにしろ、資産の棚卸は効果が出るのです」と指摘。さらに、人事連携や基幹連携など、周辺システムの移行も視野に入れる必要があると注意を促した。
同氏は「移行先グループウェアベンダがノーツに詳しくない場合が多いでしょう。ノーツを他製品に移行するとしてもノーツの知見が必要です」と強調した。
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使い勝手のいいシステムだ
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マイクロソフトの調査によると、ユーザーは、「ノーツで一番使う機能はメールである」、「自分が見るべきDBは決まっている」、「サーバ名やDB名は覚えていない」、「社外から使えたら便利だと思っている」という。一方、IT管理者は、「メールのトラブルは恐ろしい」、「DBに入っている情報の内容までは知らない」、「ノーツの導入効果は数値化が難しい」、「ユーザーの使い方までは把握していない」というのが実態のようだ。
そこで澤氏は、この両者の視点を合わせるには「日記」を書いてもらうと良いと話す。同氏は「既存資産の棚卸を考えるとき、他人の部屋の掃除を想像してみよう。汚いから捨てていいかと聞くと、思い出の品だから取っておくという。何を取っておき、何を捨てるのかIT管理者にはまったくわからない。そこでユーザーに日記をつけてもらう。ユーザーの行動を時系列にピックアップする。何をし、どこに行ったかをヒアリングする。行動にひもづくシステムは何か、という観点で利用システムのリストを作成する。するとどのような行動のもとでシステムを必要とするがが見えてくる」と説明する。
ユーザーにとって使い勝手の良いシステムを提供するには、ユーザーの行動を知るべきだと澤氏は指摘する。自分の行動にマッチしたシステムは使い勝手がよくユーザーの満足度が高くなりやすい。満足度の高いシステムは、IT管理者はポジティブなフィードバックを得られやすい。
「移行することそのものにメリットがあるわけではありません。ユーザーにとっては、いままでできなかったことが、できるようになることがメリットです。IT管理者にとっては、ユーザーの利用度がアップし、ポジティブなフィードバックが来るようになることがメリットでしょう」(澤氏)
同氏は、ノーツの移行コストは「費用」なのかという観点から、コストに対する考え方についても触れた。機能を継承するだけなら「費用」であり、ユーザーがメリットを感じなければ「費用」であり、移行作業に無駄があれば「費用」と感じる。そこで「投資」となる領域を明確にすることが重要と指摘する。同氏は「漠然とコストカットと言っても、はっきりイメージできるものではありません。具体的な目標を立てて、ITで実現できることを検証することが大切です」と述べた。
セミナーでは棚卸に使うツールも紹介され、多くの聴講者の関心を集めた。この製品は、CASAHL社製の「Lotus Notes Application Analyzer 2009」。Data Crawlerというツールを用いてNotes DBのさまざまな情報を取得し、暗号化ファイルを作成。これをCASAHL社で分析し、移行の難易度や推奨される移行先Microsoft 製品リストが出力して、レポートがユーザーのもとに届くという仕組みだ。
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Lotus Notes Application Analyzer 2009 のお問い合わせ
お問合わせ先: アセントン株式会社 〒141-0031東京都品川区西五反田7-13-6 SDI五反田ビル10F |
近い将来、解決策を提供したい
セミナー最後の講演は「顧客ニーズに対するサイボウズ製品の現実と実際」と題して、サイボウズ カスタマー本部大手市場開発部 部長の阿部一真氏が登壇した。同社の製品において、ノーツからの移行対象となるのは「サイボウズ ガルーン2」と「サイボウズ デヂエ8」だ。
冒頭、阿部氏は、最近流れている情報について訂正した。「サイボウズは大規模では動かないとか、ノーツからデータ移行できないといった情報が流れていますが、これは誤解です。データ移行は可能ですし、民間、官公庁ともに万人規模の実績があります」と話した。ちなみに、データ移行については、JavaベースのAPIを同社は用意しており、これを使ってインテグレータが移行ツールを開発し、このツールを用いてサイボウズにデータ移行する。
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また、移行しない理由としては、データ移行費用が高額であること、既存DBの移行ができても工数がかかり過ぎること、あるいは移行する時間がとれないことが、主な理由となっている。
同氏は「サイボウズ デヂエ」についても簡単に紹介した。ノンプログラミングで商談報告書やクレーム管理などデータベースを作ることができるWebデータベース製品だ。「グループウェアは非定型のフロー型の情報を得意としますが、ストック型で定型の仕事には向かないところがあります。グループウェアを補完するのがデヂエです」と解説する。エンドユーザーは、一切プログラミングせずに簡単にライブラリを作成でき、「ライブラリに入った情報について、メールで通知することができます。この機能を簡単なワークフローの替わりとして利用することも可能です」と述べた。
ただ、デヂエのデータベースは中身を覗くことができないため、ノーツDBの移行については難しい部分がある。同氏は「我々も問題意識を持っており、そう遠くない時期に何らかのソリューションを提供する予定です」と語った。新たな解決策に期待したい。
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