- 2009/03/04 掲載
【連載:世界恐慌を突破するためのツール、経営の「見える化」】(2)奇跡のV字回復を「見える化」する(2/2)
SPLENDID21により日本電産サーボを分析
それでは、まず、日本電産サーボのSPLENDID21による分析結果を見てみましょう。※クリックで拡大 |
図3:日本電産サーボのSPLENDID21による分析結果 |
2008年総合評価(企業が成長したか衰退したか)が黄信号領域から飛び出しました。○と矢印で示したとおり、営業効率の改善が大きく貢献しています。また営業効率改善により流動性の改善も起きています。日本電産はグループ会社化に際して増資していませんので、純粋に営業効率改善による流動性改善と見ることができます。
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図4:日本電産サーボの企業力総合評価 |
2006年、2007年は営業損失を出し、営業効率(儲かったか)は赤信号領域になっています。強い会社は営業効率が赤信号領域に入っても、翌期青信号領域に回復できます。2008年は日立グループの時代より良い営業効率になりました。3Q6S活動の成果でしょう。社員の机の中を棚卸したら、5年分の文房具類が出てきたそうです。
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図5:日本電産サーボの営業効率 |
生産効率(生産性は上がったか)は改善に向かいましたが赤信号領域のままです。永守会長はM&Aに際してリストラ(首切り)は行わないことを決めておられます。
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図6:日本電産サーボの生産効率 |
流動性(短期の資金状況)は悪化トレンドから改善トレンドへ移行しました。
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図7:日本電産サーボの流動性 |
安全性(長期の資金状況)は青信号領域の比較的高い位置にあります。日本電産サーボはもともと良い会社であったことがわかります。
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図8:日本電産サーボの安全性 |
日本電産サーボでは長年使ってきた金型が、ずっと雨ざらしのまま工場の外に放置されたままになっていました。再利用が十分可能な金型でしたので、「長年、活躍してくれた金型を使い終わったら雨ざらしにするのか!」「あなたたちも使い終わったらこのような扱いをされてもいいのか」と、永守会長は叱ったそうです。その金型を磨いて売ったら何と700万円になったそうです。日本電産は売上高1億円あたりの経費(変動費)が430万円なのに対し、日本電産サーボは1000万円も使っており、それを意識改革によって500万円にまで減らしました。
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図9:売上総利益率、売上高経常利益率の改善 |
そんな話を裏付けるかのように売上総利益率が6.93%改善しています。売上高経常利益率も7.48%改善しています。
コストダウンメニューの「見える化」
日本電産サーボのように、コストダウンを有効に行うためには、コストダウンメニューの「見える化」が必要です。人件費で40項目、福利厚生費で30項目という具合に、コストダウンメニューを列挙する必要があります。(コストダウンメニューがイメージできないのに、コストダウンが実行できるはずがありません。)
地代・家賃/水道・光熱費/通信費/保険料/人件費/福利厚生費/研修費/アウトソーシング/事務管理費/OA費/旅費交通費/接待・交際費/会議費/金融費用/収入印紙代/警備費/清掃費/車両費/販売促進費/在庫管理費/広告宣伝費/物流費/店舗管理費/設計費/製造費/生産管理費/資材購買費/外注加工費/品質管理費/設備管理費その他全勘定科目で、ほぼ1500項目あります。メニューの実行数が多ければ多いほどコストダウンすることになります。
永守社長が登場されたTV番組では、窓側のいらない蛍光灯を取り外す、コピーの裏面も使うなどのシーンが映し出されていましたが、コストダウンの効果を出すためには、より多くのコストダウンメニューを実行する必要があります。また、購買費など金額の大きいものから順番に実行するのも当然のことです。(日産自動車カルロス・ゴーン氏は購買費を一番目に圧縮しましたが、効果からいって当然のことです。)
コストダウンメニューはプロフィットセンターの長に配布し、トヨタのA3文書方式で管理すると良いでしょう。
最近、地代家賃、旅費交通費、印刷費、間接資材などを対象とした成功報酬型のコストダウンソリューション企業が登場し、話題になっています。自社で手に負えないケースはこういう企業を利用するのもひとつの方法です。
花の咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ
親会社の日本電産の連結財務諸表の分析を見てみましょう。営業効率が天井からはがれおちてきています。経常利益増加率も下がってきています。※クリックで拡大 |
図10:日本電産の連結財務諸表の分析 |
辣腕経営者の永守社長も今回の世界恐慌には相当危機感を強めているようです。2008年11月中旬に入り、8800社の納入先すべての受注が落ち込み、特に海外顧客は『キャッシュ・イズ・キング』と言って年末の決算に向けて在庫圧縮に走ったそうである。「風がなくても凧をあげる経営」を邁進して来た日本電産も今や「暴風雨で糸が切れないように必死で支えている状態」といっている半面、危機に直面すると収益改善策が次々に出てくるとも言われています。
また、永守社長が1930年ごろの世界恐慌に関する書物をむさぼり読んで考えた12項目の不況対策を社内に出したが、ほとんどがコスト削減に関する指示になったということです。(日本経済新聞 12月31日朝刊参照)
「花の咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ」と永守社長は2009年1月5日に訓示されたようですが、世界恐慌を生き抜いた企業はその後、飛躍的に成長したことを永守社長は熟知されているようです。この危機を乗り越えれば、日本電産は成長の足を一段と速めるにちがいありません。
≪次回へつづく≫
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