クレジットカード会員情報を保護するための事実上の国際標準規格で、2008年に入ってから日本国内でもセキュリティ業界を中心に急速に関心が高まっている「PCI DSS:Payment Card Industry Data Security Standard」。本連載では、ビジネスアシュアランス 代表取締役社長で、ネットワンシステムズ セキュリティ事業推進本部本部長をつとめる山崎文明氏に、PCI DSSについて解説いただくとともに、そこから学べる情報セキュリティ対策についての戦略をご紹介いただく。
ISO/IEC27000は、マネジメント領域の網羅性を保証するものではあるが、事業継続やネットワークセキュリティなど、個々のマネジメント領域に対するガイドラインとしては、十分とは言えない。そのため、個々のマネジメント領域におけるガイドラインを充足させるため、ISO/IEC27000には次々とガイドラインが追加されている。セキュリティ実装基準に深く関わるネットワークセキュリティに関しては、ISO/IEC CD 27033-1(Information technology -- Security techniques -- IT network security -- Part 1: Guidelines for network security)の追加が予定されている。
セキュリティ実装基準を策定する場合も網羅的な検討が不可欠で、網羅性を検証する意味でもISO/IEC27033に基づいた現状のセキュリティ対策の整理や実装基準作成の基本とすることが極めて重要である。このコラムの第1回「PCI DSSとは何か」で「PCI DSSの登場の背景にはCNP犯罪(Card Not Present Fraud)と呼ばれるインターネット上の犯罪を防止することを目的としていることを知っておくことは、PCI DSSの要求事項を理解する上で重要であろう。」と書いたが、PCI DSSの各要求事項はISO/IEC27033-1が定義する「ネットワークセキュリティを確保する上でコントロールしなければならない領域」とそれぞれ対応している。