ボーン・グローバル・ビジネス・コミュニティへ

　モバイルマンデーの取り組みは2000年頃にスタートしたが、本格的に国際展開が始まったのは2004年ごろからだという。現在では、全世界の50都市以上でモバイルマンデーが開催されている。ロンドンなどヨーロッパの携帯電話の中心地だけでなく、アメリカ、シリコンバレー、オースティン、シアトル、アジアでは、東京をはじめ、ソウル、シンガポールなど、携帯電話産業が盛んな地域に支部を置いている。

　国際化のきっかけについてヤリ氏は、「グローバルランゲージである英語で、非常にオープンなコミュニティ運営をしていたので、世界中のいろいろな人からモバイルマンデーをやってみたいというコンタクトがあった」と語ってくれた。

　また、この背景には、携帯電話端末市場で世界をリードするノキアのお膝元、ヘルシンキで開催され、ノキア、そして、ノキアのエコシステム上に存在するさまざまな携帯電話関連企業がプレゼンテーションを行ったことで、良質のコンテンツ、コミュニティがヘルシンキで形成されたことも影響しているだろう。

　そして、世界50都市以上と、これだけグローバル規模で、コミュニティが広がったのにはそれなりに運営ノウハウがあるのではないかと考えられる。このことについてヤリ氏に聞くと、モバイルマンデーでは、「運営ノウハウ面でのサポートや、基本的なコンセプトは共有するが、活動の内容はできるだけ各都市にできたコミュニティの状況に合わせること。そして、各都市のコミュニティのリードが、それぞれのコミュニティをしっかりとリードすることが重要」ということをまず挙げた。

　これはどういうことか。たとえば、わかりやすい例として、日本のモバイルマンデーのロゴマークがある。それは、本家のマークにはない日本らしさを感じる日の丸がアレンジされたものになっている。つまり、ブランドポリシーなどで縛るのではなく、ある一定のコンセプトの中でローカルな運営ができることが、コミュニティをそれぞれのマーケットで確立する上で重要だという。また、ローカルでスポンサーシップを得るためには、ある程度の自由度があったほうが望ましいということだ。

　その一方で、グローバルで携帯電話に関連するビジネス・コミュニティというコンセプトを守るため、各国の運営者が集まるグローバルサミットなどを開き、意識の共通化を図っているという。また、Webサイトで全世界のコミュニティが互いにリンクし、結びついている。

　また、「運営チームを作ること」も、コミュニティ運営にとって重要であるそうだ。そのため、個人でモバイルマンデーを立ち上げるということではなく、常にコミュニティの運営チームを作ることを要請しているという。

ビジネスとしてのモバイルマンデー

ヘルシンキでのモバイルマンデーのイベントの様子

　モバイルマンデーの収益面での運営状況について聞いてみると、ヤリ氏は「まず、モバイルマンデーはビジネス・コミュニティであって、利益を生み出すためにやっているわけではない」と答える。

　基本的に、運営に当たっては企業からのスポンサーを募っている。しかし、「企業スポンサーの意向によってトピックがすべて決まっているわけではない」と、ヤリ氏はビジネス・コミュニティとして中立性を確保していることを強調した。

　ちなみに、ヘルシンキのモバイルマンデーは、市内でも有名なクラブが会場になっている。

フィンランド・システムの強さの象徴ともいえるモバイルマンデー

　現在、モバイルマンデーにはさまざまな情報が集まってくるという。そしてそれは、このビジネス・コミュニティに集まる人に役立っているという。

　「たとえば、新しいモバイルゲームを思いついた起業家がいるとしよう。モバイルマンデーにコンタクトを取れば、世界でモバイルマンデーを運営し、情報が集まってきているので、そのゲームが世界的に見て新しい取り組みかどうかがすぐわかる。また、コミュニティの中で足りないリソースを見つけられるかもしれない。実際に、モバイルマンデーから多くのモバイル・ビジネスが育っている」とヤリ氏は語る。ヤリ氏自身も、成功した起業家として若い起業家に対してアドバイスを行っているようだ。

　フィンランド・システムの強さは、このモバイルマンデーというグローバル・ビジネス・コミュニティーが生まれたことに象徴される、世界市場への広がる力である。小さな国から世界のマーケットにアクセスするフィンランドの強さは、このモバイルマンデーというコミュニティからも感じられる。