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  • 2008/02/22 掲載

【横田由美子氏インタビュー】女性ルポライターが見た「男社会を生き抜くための女の武器」とは

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1985年に男女雇用機会均等法が施行されてから、20年以上が経過した。しかし、企業社会は依然として男社会のままである。女性のキャリア形成を阻んでいるものは何なのか。そして、少数だが存在するトップに立つ女性に共通するものとは?『私が愛した官僚たち』『ヒラリーをさがせ!』の著者でもあり、多くの女性起業家やキャリア女性に取材しているルポライターの横田由美子氏にうかがった。

 男女雇用機会均等法(注1)が施行されてから、今年で23年になる。昨年4月の改正では、育児に関する条項も盛り込まれ、女性の労働環境はかなり整備されてきた。最近ダイバシティ(注2)などという言葉をよく耳にするのもそのせいである。しかし、いくら環境が整っていても、組織の中で女性がトップに立つ例はまだまだ少ない。依然、男社会である企業社会で、優秀な女性がいつしか潰されてしまうのだ。これは、国の方針を定める政治の世界でも同じだという。今年1月に発売になった『ヒラリーをさがせ!』(文春新書)では、女性のキャリアなどをテーマに執筆を続けてきたルポライターの横田由美子氏が、究極の男社会である政治の世界を通じて、女性のキャリアの積み上げ方を鋭く分析している。そこには男社会を生き抜く女性の生々しい戦いが描かれていた。

【コラム】【横田由美子氏インタビュー】女性ルポライターが見た「男社会を生き抜くための女の武器」とは
『ヒラリーをさがせ!』
――横田さんは女性に関するキャリアをテーマに執筆を続けていらっしゃいます。今年1月に発売された『ヒラリーをさがせ!』では、小池百合子議員、野田聖子議員、高市早苗議員など、政界で活躍する女性政治家をテーマにされていますが、その理由はどこにあったのでしょう。

横田氏■
私自身もそうなのですが、女性は多かれ少なかれ「毒」を持っています。私は1998年ごろから女性の起業家の取材を続けてきて、女性のキャリア形成に関して興味を持っているのですが、女性が男社会でキャリアを積んでいく場合、その「毒」の出し方がキーポイントになるのではないかと思ったんです。女性政治家という職業はそれが分かりやすいというか、いちばん見えやすい職業なんですよ。

――「毒」とは何でしょう。

横田氏■
簡単に言うと「女」の部分でしょうか。片山さつき議員も「女性議員は、女性的な部分と男性的な部分と両方持ち合わせた両性具有的な人ではないと難しい」とおっしゃっていましたが、政治の世界に限らず男社会で生き残っていくには、その「女」の部分をどのように出していくか、どのようにうまく利用していくかがカギとなるわけです。

――今回取材された女性政治家は、全員その「毒」を持っていたのですか。

横田氏■
はい。みなさんお持ちでしたね。実は取材中、その「毒」に当てられて数日間高熱を出し寝込んでしまったこともありました。消化不良を起こしてしまったというのか、自分の中で「毒」を消化するのが非常に難しかったんですね。女性記者の先輩に聞くと、消化する必要はないんだと言われましたが。「食べたら食あたりをおこすじゃない」って(笑)。記者というのは調理をするものであって、自分が食す必要はないんだということですね。そういう意味では自ら食べて「毒」に当たってしまうというのは、まだまだ修行が足りないのかもしれません。

――それほど、女性政治家の「毒」は強力だということでしょうか。ふぐ職人だったら、毒を除いて食卓に出すわけですが、『ヒラリーをさがせ!』には、女性政治家の「毒」がたっぷりと盛り込まれている。そこがこの本の斬新さであり、面白さにつながっているということですね。誰にいちばん「毒」がありました?

横田氏■
それは私の口からは言いづらいので、読んでくださった方がそれぞれ感じていただけるとありがたいかと(笑)。私が感じた「毒」とほかの方が感じる「毒」はまた違うと思うので、読んでいただいて、新たな「毒」を発見してもらえたらうれしいです。

――「自分の写真や肖像画、取り上げられた記事、出演した番組の視聴率表で部屋の壁が埋まっていた」という片山さつき議員のエピソードなどは、「毒」を感じる人が多いかもしれませんね。女性政治家の方々は、自らの「毒」に自分がやられてしまったりしないのでしょうか。

横田氏■
「毒」を持っているということは、上昇志向にもつながっていくし、男社会のなかでは、キャラクター立ちにもつながっていく。毒といっても必ずしも悪いものではないんです。現在、衆議院選挙で採用されている小選挙区制のなかでは、女性候補者はキャラクターが立っていなければ当選するのは難しいですからね。過剰な毒みたいなものが見えたほうがメディアも取り上げやすい。

 特にテレポリティクス(注3)と言われている時代の中では、毒は必要な要素なんです。小池百合子議員にせよ。高市早苗議員にせよ、最初はキャスターという形で知名度を上げていきました。メディアをうまく利用して政界でトップに立たれたわけです。小泉首相が作り上げた劇場型政治(注4)とは一線を画す立場を取っている野田聖子議員でさえも、最初のころはコメンテーターとして番組に登場するなど、積極的にメディアに出ていましたから。15年経って、ようやく今のような立場を築くことができたんです。女性議員はメディアを利用しないとなかなか票が取れない。地位を確立するまでは、スキャンダルの嵐にもまれなくちゃならない。これが現実なんです。

――横田さんは女性議員の数はもっと増えるべきだという主張をされていますが、それはなぜでしょう。

横田氏■
女性の声を政治の世界に届かせるためには、やはり男性では難しいんですね。女性の置かれている立場、抱えている問題を本当の意味で推し量ることはできない。女性議員が増えた方がいいのは、明確なんです。それなのに増えないのはなぜなのか。衆議院で採用されている小選挙区制で女性が勝ち抜いていくにはあまりにハードルが高すぎるんです。都心部ならまだしも、地方では毎日会合があったりするわけですから。とてもじゃないけど、家庭をもつ女性にできる仕事ではない。恋愛、結婚、出産といった女性のアニバーサリーと選挙活動を同時に進めることは不可能に近いんですね。現行の選挙制度では、自分から手を挙げて立候補しようとする人は少ないでしょうね。

――セクハラもありますか?

横田氏■
みなさん公式には否定されますが、やはりあります。選挙活動に影響が出るので表立っては言えませんけどね。「私は地元や政党でセクハラ受けています」なんて言ったら、地元でバッシングされるし、男社会である政党からも総スカンを食う。選挙で不利になることがわかりきっているから、自分からは絶対に言えないわけです。だからこそセクハラ問題は、メディアの側が伝えていかなきゃならないことだと思いますね。
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