• 2007/09/27 掲載

ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略(3)(2/2)

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データ通信ビジネスのすべてをマネジメントする
ファーストホップ社のテクノロジ

【マネジメント】ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略
ファーストホップ社の前には、ヘルシンキの海が広がる
 ファーストホップ社の主力製品、ファーストホップ ワイアレス ブローカーは、携帯電話運営会社を対象とした、データ通信“ビジネス”をマネジメントするソフトウェアだ。

 この製品の核となるのが、通称、ミドルウェアと呼ばれる携帯電話運営会社のネットワークと、そのネットワークを利用し実施するサービスの間に位置し、ネットワーク上に流れるトラフィックを効率よく一元管理するソフトウェアだ。

 ファースト ホップ ワイアレス ブローカーの真の強みは、このネットワーク管理だけでなく、携帯電話会社がデータ通信ビジネスを行ううえで必要な機能をワンストップソリューションとして提供していることだと言ってよいだろう。

 機能的には多岐にわたるが、たとえば、携帯電話会社のコンテンツ提供サービスの多くは、コンテンツプロバイダと呼ばれる第3者によってコンテンツ提供が行われるが、この第3者を含めたコンテンツマネジメントシステムを提供している。その他にも、携帯電話運営会社にとってどのコンテンツが収益を上げているのかを分析するビジネスインテリジェンスツールなどが挙げられる。

 携帯電話会社側から見れば、ファーストホップ社のソフトェアを導入することで、効果的なデータ通信ビジネスを運用できることとなる。現在、ファーストホップ社のサービスは、60社以上の携帯電話会社に採用されている。さらに、ファーストホップ社の製品の利用者を携帯電話の契約者数に換算すると、4億人以上のユーザーを支えていることになる。

 にわかに信じがたい数字であるが、ファーストホップ社の顧客の名前を聞けば理解できる。ファーストホップ社の顧客は、ボーダフォン、テレフォニカ、ティーモバイルなど、ほぼすべてのヨーロッパの巨大な携帯電話会社を網羅しているのだ。つまり、ファーストホップ社を知らなくとも、ヨーロッパを旅行した際にローミングやレンタル携帯電話などでデータ通信を行った場合には、ほとんど自動的にファーストホップ社のテクノロジを使うことになるともいえる。

 また、アジア地域にも強く、マレーシアのセルコム社などをはじめとして、インドネシア、シンガポールなどにも顧客をもち、今回、インタビューに応じてくれたファーストホップ社のマーケティングビジネスデベロップメント担当副社長のカイ・ハグロス氏によると、今、最も売上げが伸びている地域はアジアであり、現在、売上げの約半分はアジア地域から産出されているとのことだ。

ファーストホップ社の成功の秘訣

【マネジメント】ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略
ファーストホップ社
マーケティングビジネスデベロップメント担当副社長
カイ・ハグロス氏
 ファーストホップ社の設立は、1997年。当初は、地元フィンランドの携帯電話会社向けのシステム開発がメインビジネスであった。その後、携帯電話会社とのさまざまなプロジェクトを通じて、現在のファースト ホップ ワイアレス ブローカーにつながるアイディアを着想し、2001年ごろから製品開発にフォーカスする体制になったということだ。

 その後、製品開発に必要な資金をベンチャーキャピタルからの投資などで補い、現在では売上高約15ミリオンUSドル(約18億円)の規模まで成長しているという。ハグロス氏によると、「損益分岐点は超えている」ということで、確実に利益を稼ぎ出す企業となっているようだ。

 従業員数は約70人で、そのうちセールス・マーケティング・ビジネスデベロップメントなどに携わるスタッフが10人程度、そのほかのほとんどがR&Dセクションに属しているという製品開発主体の会社である。また、主要な携帯電話基地局メーカー、エリクソン、ノキア、シーメンスなどをパートナーに抱え、オフィスはヘルシンキ本社を中心に、スペイン、ドバイ、シンガポールに構えている。

 ファーストホップ社の成功の秘密は、まず、特定領域(ニッチ)ながらワンストップソリューションを作ったことで、クライアント側に非常に評価されやすいソフトウェアが誕生したことにあるといえる。インタビューのなかで、文化も言語も違うアジア市場での攻略ポイントについてハグロス氏に聞くと、「アジア市場でも、製品のコンセプトは初めてのプレゼンテーションのときから好意的に受け入れられた」と、製品力によるアピールがどこの市場でも有効であり、やはり、製品の着想のよさが販売につながったということを教えてくれた。

 もちろん、このような背景には、ハグロス氏をはじめとしてノキア等の大企業でグローバルビジネスを経験したマネジメントチームのビジネス遂行能力の高さもその要因のひとつと考えられる。製品開発には、テケスの資金も導入されており、ザ・フィンランド・システムに生息する企業としてのメリットも享受している。

 グローバル市場のトレンドを読み、経験豊かなスタッフによって、グローバル市場に製品を送り出すファーストホップ社は、まさにボーン・グローバル企業の好例といえよう。

 今後、携帯電話によるデータ通信市場はますます盛り上がりを見せ、また、テレコムオペレータにかかる価格競争圧力は増すものと考えられる。そのなかでのファーストホップ社の飛躍に注目したい。

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