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企業が成長を続けるために、データやAI活用によるイノベーション実現の重要性が増している。そうした中で、自らの知見を生かしてイノベーションの実現に寄与できる可能性を秘めているのが、データを主体的に扱うD&A(Data&Analytics)リーダーだ。D&Aリーダーが主体性を発揮して、イノベーションに携わるには何が必要なのか。ガートナーの藤原恒夫氏が解説する。
D&Aリーダーに期待される「ある役割」
AIやBIなどのデータ活用における究極的な目標に位置付けられるのが、新たなアイデアを実行し価値を生み出すイノベーションだ。
ガートナーの調査によれば、経営環境の先行きの不透明さが増す中、企業は過去2年間でイノベーションに関する人材採用や資金提供、人材育成などの施策を着実に強化してきた。CINO(最高イノベーション責任者)やその相当職を設ける企業はすでに63%に達し、総運営予算の平均5.9%をイノベーションのために投じているという。
そうした状況の中で、「データを主体的に扱うD&A(Data&Analytics)リーダーには、イノベーション創出のけん引役としての活動が求められています」と話すのは、ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデントアナリスト 兼 フェローの藤原恒夫氏である。
ただ藤原氏は、その実践は決して容易ではないとも指摘する。そもそも現状において、イノベーション・リーダーシップに関する体系立ったフレームワークが整備されている企業は皆無であることに加え、プロジェクトの推進には複数のCxOや専門家、ステークホルダーを巻き込んだチーム・マネジメントが必要だが、立場や考え方の違いなどからそれも一筋縄ではいかないからだ。
「組織全体でのイノベーションの目的や各担当の役割が明確化しにくいことも挙げられます。そうした中、D&Aリーダーは、データを共通言語としてCxOらにそれらを明示することも可能です。それがイノベーション・リーダーとしての活躍が期待される大きな理由になっています」(藤原氏)
イノベーション創出に向けた「4つ」のミッション
では、D&Aリーダーがイノベーション創出の牽引役となるためには、具体的に何が必要になるのだろうか。
藤原氏はイノベーション創出に向けたD&Aリーダーのミッションとして次の4つを提示する。
- 投資を主導する
- 関係を管理する
- 成果を実現する
- ディスラプターになる
最初の「投資を主導する」はテクノロジーへの投資を意味する。新たなテクノロジーを抜きにしたイノベーションは現実的に難しく、D&Aリーダーは、投資においてAI領域などの専門的な知見を提供することができる。
次の「関係を管理する」ことでは、多様な参加者の意見を勘案し、D&Aリーダーが最終的に最適なテクノロジーの選定を決定する役割を担う。
「成果を実現する」に関しては、前述の通り、データを共通言語として具体的な役割や目的を明示し、参加者が迷いなく集中してプロジェクトに当たれるよう支援する。
その上で、「最も重要なミッション」と藤原氏が話すのが、「自身がディスラプター(破壊者)になる」ことである。
そのプロセスとしては、まずリーダー自らがイノベーションを通じた過去の否定を厭(いと)わないだけの、社員の納得に足る新たな組織文化をトップダウンで提案する。その上で教育リソースと実質的な動機を与えてチームの信頼を勝ち得つつプロジェクトに巻き込み、共通のビジネス成果の達成に向けた権限も与えることでやる気を引き出す。そして、チーム自らルールを破るものとなり、絶えず実験を続けていくことが求められるという。
このプロセスを通したD&Aリーダーの最終目標は、「イノベーションにより組織の限界を押し広げる/打ち破る」ことになる。
「イノベーションのプロジェクトの大半は失敗に終わります。現場の信頼を得るには、失敗を許容する文化の醸成も必須です。リーダーとして、他部門の成功プロジェクトから資金を回してもらうといった交渉も必要となります。アイデア創出を促すための、社長賞などの報酬の仕組みといった工夫も必要でしょう。実際に、あればアイデアが生まれやすく、また、前向きなマインドが形成されやすいため、ビジネスケースの蓄積もそれだけ速やかになります」(藤原氏)
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