- 2007/04/23 掲載
仮想コミュニティ「セカンドライフ」とマーケティングとしての可能性
野村総合研究所 社会ITマネジメントコンサルティング部 主席研究員 山崎秀夫氏
社会ITマネジメントコンサルティング部 主席研究員 山崎秀夫氏 この記事の内容は ストリーミングでも視聴できます。 |
セカンドライフが、米国でなぜあんなに流行っているのかというと、「人工現実感」あるいは「VR2.0(Virtual Reality 2.0)」といわれるものが、いよいよビジネスのなかで本格的に活用されはじめたという背景がある。空港やテーマパークへ行けば、アバターの発想やモーションキャプチャを利用した技術を多く見ることができる。人工現実感の実用化という点で、アメリカは日本より進んでいるのだ。
セカンドライフがこれまでのゲームとまったく異なるのは、大衆表現の要素をもっているということだ。さらに人工現実感+「複合現実感」(ミックスト・リアリティ)の要素と、「コモンズ」ももっている。コモンズというのは、村の入会地、共有地のことで、誠実性や倫理観や極めて大事にされるコミュニティを意味している。昨今、企業が主導するステルスマーケティングに対して大きな反発が寄せられているが、これと同じことがゲームの世界にもおきている。インターネット上に穏やかなコモンズができているというのが、社会学上から見たWeb2.0の重要なポイントだ。
では、似たようなソーシャルメディアが多くあるなかで、セカンドライフの特徴はどこにあるのだろうか。mixi(ミクシィ)とは何が違うのだろうか。
一言でいえばそれは「ネットイベント」だ。YouTube(ユーチューブ)やマイスペース、そしてmixiなどは、すべて非同期で利用するサービスだ。日記を書いたり動画を投稿したりしたあと、みんながそれを見てコメントを投稿する。これらはすべてバラバラに行なわれる。一方仮想現実の世界では、全員が同時にやってきてひとつのイベントを行える。ネットイベントは画期的な出来事で、マーケティングという面から見てもさまざまな可能性がある。
技術面から見ると、セカンドライフはオブジェクト指向のシステム設計が徹底されている。そのため、1台のサーバ(1つの島に相当する)で扱えるアバターは30~50人程度に制限されている。ひとつのイベントに参加できる最大数は、1000人くらいが限界といわれている(この場合18のミラーサーバが必要になる)。クチコミ広告を起こすのに1000人を多いと見るか、少ないと見るかがポイントだろう。
ところで、セカンドライフの世界を構造的に把握するには、ふたつの小説が参考になる。ひとつは、早川書房の「スノウクラッシュ」だ。現実世界とリンクして利用されるという点で、セカンドライフは小説の中の「メタバース」(仮想世界)とまったく同じモデルを想定している。そしてもうひとつのメンタルモデルが「Burning Man」だ。ネバダ州の砂漠に芸術家が毎年集まり、共同生活をしながら村や町を作るというイベントを小説にしたもので、セカンドライフにおけるものづくり、街づくりのベースになっている。このふたつのメンタルモデルが合わさってセカンドライフのモデルが作られているということは、セカンドライフの哲学的な背景を構造的に理解するのに、かなり重要だ。
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