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  • 2023/12/26 掲載

なぜ「紙・ハンコ」文化はなくならないのか?日本企業特有のプロセス刷新の手法とは

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企業がデジタル化を進める一方で、業務プロセスの見直しがされていないために、紙ベースの仕事がいまだに多く散見される。日本企業の業務プロセスには国民性が色濃く反映されており、それが現在の非効率さを招いている。では、こうした取り組みはどのように進めていくべきなのだろうか。ガートナー バイス プレジデント,アナリストの鈴木雅喜氏が、“人”と“ツール”の両面でのプロセス刷新の手法を解説するとともに、その先に企業が目指すべきデジタル活用の在り方を提示する。
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企業のプロセスについて87%が問題ありとみている
(出典:Gartner(2023年11月))

日本企業の8割以上が社内プロセスを問題視

 デジタルは今や経営に欠かせぬ武器だ。その共通理解の下、企業ではこれまで多様な業務でシステム化が進められてきた。近年では、いまだ残る人手での入力作業の自動化/省力化などを狙いとした、RPA利用も活発化している。

 「それにも関わらず、現状を概観すれば紙ベースの業務がいまだ数多く残されています」と声を強めるのは、ガートナー バイス プレジデント,アナリストの鈴木雅喜氏だ。

「新型コロナ禍を奇貨に多様な業務が新たにデジタル化されましたが、新たなプロセスにもムダが残されているとの声を少なからず聞きます。その根底にあるのは、ツールは導入されたものの、プロセス自体はアナログ時代の非効率な状態のままという現実です。真のデジタルによる競争力強化に向け、デジタルに合致する抜本的なプロセス刷新が企業に求められています」(鈴木氏)

 企業もこの課題を深く認識済みだ。ガートナーの調査でも、87%が「デジタル化以前に社内プロセスが問題」と答え、16%が「大きく見直すべき」と回答している。

 プロセスのムダの多さは日本企業である以上、仕方のない面もあるという。日本は国民性として失敗を必要以上に恐れがちだ。そのため、「失敗を繰り返さない」ための再発防止策を長年にわたってプロセスに組み入れ続け、それが今の非効率性の原因だと鈴木氏は解説する。

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ガートナー バイス プレジデント,アナリスト 鈴木 雅喜 氏

ワークフローの見直しで避けられない“人”の問題

 そうした考え自体は否定すべきものではない。「しかし、ものには程度があり、適切な程度は時代により変わります。現代は“リスク回避”や“正確性”とトレードオフにある“スピード”と“効率性”がより重視され、結果、プロセスが現代と合致しなくなっているのです」と鈴木氏は強調する。

 そして、考え方を変えるには、社内を巻き込んで合意を形成するより手はなく、デジタル化の問題は最終的には人の問題に行き着くのだという。

 鈴木氏によると、その過程はBPRそのものであり、道のりは極めて険しいという。しかし、効率化を進めるには「できる範囲を絞る」などして前進するよりほかない。

「社内の意識を変えるには、仲間集めが重要です。その意味で、取り組むにあたっては社内マーケティングにも同時に力を入れるべきです」(鈴木氏)

 システム化の検討にかかるのは、あくまで合意が取れた後だ。合意前に導入を進めては社員の反発を招き、使われなくなるリスクが大きい。

 その上で、検討過程では見直し後のプロセスと既存ツールを突き合わせ、機能の過不足などを勘案してツールを決定するのだ。

 一般的な業務で検討対象となるツールは、次の4つとなる。
  • 仕組み化を進めるための「アプリケーション/SaaS」や「RPA」など
  • 印鑑をデジタル化するための「ワークフロー/電子サイン/電子印鑑」と証跡のための「電子証明書」など
  • 紙の電子フォーム化や電子ファイル化に用いる「文書管理(分類、タグ付け、検索、アクセス管理などの機能)」と利用端末の「タブレット」など
  • 紙をスキャンするための「OCR/AI-OCR」など
【次ページ】システム化で「絶対にやってはいけない」こと
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