- 会員限定
- 2006/12/04 掲載
【企業経営で着目したい4つの時代】ビューティフル・カンパニーの時代/法政大嶋口教授(2/3)
─ビジョナリー・カンパニーは一人の偉大なカリスマ経営者が引っ張る会社ではなく、組織の力が重要だということですが、そうした会社はごく限られてしまいますよね。
嶋口●確かに、ビジョナリー・カンパニーというのは超優良企業です。そうなろうとしても、なかなかなれない。そこで90年代後半になって、「グッド・カンパニー論」が登場する。つまり、「普通の会社」「まあまあ悪くない企業」といった意味になります。日本の企業でも、90年代後半から2000年にかけて、経営理念において「グッド・カンパニーを目指す」という文言が数多く登場しました。
その心は何かというと、超優良企業でなくてもいい、普通の会社でいいんだ。ただ、独自性を持ったオンリーワンの会社になりたい。「Good Company, but Only one......」というわけです。小粒でも光る会社ですね。
そしていよいよ2000年に入って、このグッド・カンパニーに加えて、「社会からすごいと言われるような存在でなければいけない」「事業の存在価値は、それが社会に生かせているかで決まる」という考えが台頭してきたのです。Most Admired Company、最も尊敬される企業です。その流れがCSRにつながっているのだと思います。社会的な存在価値が発揮できる会社こそ、優良企業なのだという考えです。
─ビューティフル・カンパニーは、そうした考えを包含するコンセプトだと思えばいいのでしょうか?
嶋口●そうした流れをずっと見てきて感じたことは、どれもその時代、時代にあってもっともな理論、条件であるということです。ただ、条件ばかりが数多く並んでしまっても仕方がないので、全体を網羅するような概念はないかと考えました。そこで浮かんだのがビューティフル・カンパニーだったわけです。ビューティフルには、物理的、外見的に美しいという意味もありますが、精神的、内面的な美しさも必要です。さらに、ゴルフでいいショットをしたときに、日本人はナイスショットと言いますが、欧米ではグッドショット、さらに上をいくとビューティフル・ショットと言います。これには見た目のきれいさもありますが、「やった!」「お見事」「さすが」といった感嘆の気持ちが含まれているわけです。 つまり、コンプライアンスの精神や環境に対する接し方などの意味も当然重要なわけですが、それだけではなく、市場や顧客、その他のステークホルダーをワクワクさせるような力も必要なのです。
─つまり、企業のそもそもの価値は、社会に受け入れられる、消費者を感動させるような商品を提供することですから、ただお行儀がいいだけではなく、そうした成長期待も必要だという意味ですね。たとえばどんな企業がそうなのでしょうか。
嶋口●これは難しいのですが、たとえばソニーの創業理念はビューティフル・カンパニーのコンセプトに近いと思います。ソニーは実は、エクセレント・カンパニーにも、ビジョナリー・カンパニーにも取り上げられた企業なのですが、創業の目的は「真面目なる技術者の技能を最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」というものなのです。
さらに、彼らが言っていたのが、「不当なる儲け主義を廃し、あくまでも内容の充実と実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず」です。CSRの精神も見事に入っていますよね。それでいて、ベースは真面目で、最高度で、自由で、愉快なわけです。この理念はビューティフル・カンパニーのそれに近いと思います。
それで、ビューティフル・カンパニーの定義なのですが、「人々を心豊かに、ワクワクさせ、道徳的に、知的に、社会から尊敬されるような華のある会社」としました。盛りだくさんですが、最終的に「華のある会社」でなければビューティフルとは言えないと思っています。
そのための条件なのですが、4つあると思っています。・徹底した顧客主義、・社会的責任、・信頼、・革新です。
ビューティフル・カンパニーを支える4本の柱
|
PR
PR
PR