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生成AIはさまざまな領域で活用され始めているが、今後はクローン化技術への応用が加速する公算が高まっている。この分野では、著名投資家のウォーレン・バフェット氏やアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏のクローンを生成しているDelphiや音声クローン技術に特化したElevenLabsなどが注目株となっている。クローン化技術をめぐる最新動向を探ってみたい。
生成AIによる人物クローン生成プラットフォーム
ChatGPTなどの生成AIが進化を遂げた先には、意思を持ったかのようなパーソナルアシスタントが登場する可能性がある。これはマイクロソフト創業者の
ビル・ゲイツ氏なども注目する領域であり、実現すると、パーソナルアシスタントが人間に代わり、ネットを検索したり、Eコマースで買い物をしたりするようになる。
パーソナルアシスタントは、現時点では実現しておらず、開発にはしばらく時間を要するとみられている。この間、生成AIは、進化の途上で、もう1つの可能性を提示することが期待されている。それがクローン生成技術だ。
現時点では、たとえばChatGPTを使う場合、ユーザーはプロンプトを入力し、そのプロンプトに対し生成AIが回答を生成する流れとなる。特に指定しなければ、回答のスタイルはジェネリックなものとなり、特段個性のあるスタイルとはならない。
一方、生成AIを活用したクローン技術を用いることで、回答スタイルをユーザー自身に似せることが可能となる。またそれにとどまらず、著名なクリエイター、スタートアップのCEO、影響力のある思想家などを模倣した回答スタイルを生成することもできるようになる。
いくつかのスタートアップがクローン生成分野に特化したプラットフォームを開発している。その中でも注目株となっているのが米マイアミ拠点の「
Delphi」だ。
2022年12月創業の非常に新しいスタートアップで、2023年9月にはシードラウンドで、
ピーター・ティール氏率いるベンチャーキャピタル、Founders Fundなどから270万ドルを調達した。
Delphiのクローン生成技術
Delphiの共同創業者でCEOを務めるのは、米在住のイラン系移民2世であるダラ・ラジェバーディアン氏。イランで起業家だったが、すでに亡くなってしまった祖父とつながりたいとの想いから、クローン生成システムの開発に乗り出したという。
もともと、法人向けのAIソフトウェア企業である「C3 AI」のソフトウェアエンジニアとして働いていたが、2020年の夏にOpenAIが発表したGPT-3に衝撃を受けて同社を退社、人々に対話形式で商品をレコメンドするAIベースのショッピングアシスタントを開発する「Friday」を設立し売却。その後、共同創業者兼CTOとなるサム・スペルズバー氏とともにDelphiを立ち上げた。
Delphiのクローン生成技術は、公に利用可能なオープンソースのAIモデルを活用している。
バックエンドでDelphiがどのオープンソースAIモデルを利用しているかは不明だが、たとえば、オープンソースモデルとしては、メタの大規模言語モデルLLAMA2やAnthropicのClaude2などが
人気モデルといわれており、これらが活用されている可能性がある。
オープンソースのAIモデルは、ChatGPTを動かすAIモデルGPT-3.5やGPT-4などと同様に、ジェネリックなスタイルでの回答を生成する。
Delphiは、このベースモデルに対し、任意の情報を追加することで、生成スタイルをカスタマイズし、あたかも任意の個人が思考し、発言しているかのような回答を生成する仕組みを開発しているのだ。
ポッドキャスト、YouTube、テキスト、文書、Notionなどの情報をアップロードすると、Delphiのクローンアーキテクチャがそれらの情報から、原則や思考パターンを分析し、任意の個人がどのように考えているのかを理解する。
【次ページ】ウォーレン・バフェット氏などのクローン生成でメンターシップの民主化へ
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