- 2006/10/31 掲載
【田中秀臣氏インタビュー】日本の経済問題の突破口をもとめて(2/2)
----本書の構成では、前半は経済学、後半は経済思想史に分かれています。後半部分は初心者の読者には、かなり難易度が高いような気がいたしました。
![]() |
田中秀臣氏
|
ちなみに本作は、『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)に続く、私の「啓蒙三部作」の二作目と勝手に位置づけています(笑)
----三作目も楽しみですね。あと、3章の「日本のエコノミストたちは何者か」という部分は、エコノミストにとってかなり厳しい内容になっているように思います。彼らが抱えている課題についてもふれていますね。
田中:日本の邦人系の機関に所属するエコノミストはほとんど似たり寄ったりのことしか言わないのです。しかもその内容が、あまりスタンダードな経済学では見聞できない独特の業界用語や彼らなりの「理論」で分析するのが特徴です。その理由は、やはり日本の経済学教育が問題を抱えているからだと思います。
日本のシンクタンクは、90年代の半ばごろまで大学院卒のエコノミストをあまり採用してきませんでした。修士卒で高学歴となってしまう世界なのです。学部卒のエコノミストが中心となった一番の原因は、日本の大学院での経済学教育が著しく実践性を欠けていることにあると思います。
----経済学の知識を深める間もなくエコノミストとなり、OJTで共通の訓練を受けているひとばかりだということですね。それでは、彼らは、どう差をつけるのでしょうか。
田中:邦人系エコノミストの場合、日本銀行や財務省の職員と仲良くなって、どれだけ内部情報を得られるかで評価が決まってくる側面が強いのではないでしょうか。いいかえれば彼らの価値は、政府の上層部や機関にどれだけ食い込めるかが勝負でしょう。
----エコノミストは、法人、大学、政府含めて、大きく清算主義、構造改革主義と呼ばれる人たちと、田中さんが含まれるリフレ派の人たちに大きく分かれていると書かれています。
田中:ざっくりと分けると、清算主義・構造改革主義者たちの意見は昔の「アジア主義」とよく似ていて、最近では「東アジア共同体」を打ち出しています。これはすなわち、大日本主義的で海外膨張的な発想と言えます。
いっぽう、私たちリフレ派のエコノミストたちは、石橋湛山につながる流れを汲んでおり、「小国主義的」な考え方をします。私たちの主張する小国主義とは、自国の政策で国内の経済・社会問題を解決し、他国を政策に利用せず、不干渉を持って近隣諸国との友好をはかる方策なのです。リフレ政策と小国主義が、現在の日本が内包している経済問題を解決する突破口になると考えています。
(取材・構成=横田由美子)
●著者紹介
田中秀臣(タナカ・ヒデトミ)
上武大学ビジネス情報学部助教授。
専門は日本経済論、日本経済思想史。
韓国ドラマなどのサブカルチャーにも造詣が深い。
著書に『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)、『日本型サラリーマンは復活する』(NHKブックス)、『沈黙と抵抗』(藤原書店)、『ベン・バーナンキ』(講談社)、『最後の「冬ソナ」論』(太田出版)、『エコノミスト・ミシュラン』(共著、太田出版)、『平成大停滞と昭和恐慌』(共著、NHKブックス)、『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社、日経経済図書文化賞)などがある。
公式サイト:http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/
関連コンテンツ
PR
PR
PR