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- 2023/09/15 掲載
生成AIを災害対策にどう活用? IBMとNASA、Hugging Face公開の「空間AI基盤」とは
IBMとNASAが地理空間AI基盤モデルを公開
ハワイでの山火事、欧州や中国で多発する洪水など、今年も世界各地で大規模な災害が発生している。世界では、この数年災害による経済損失が増加傾向にあるといわれており、災害予防や対策が急務となっている。さまざまな対策や取り組みが実施されているが、今後はAIを活用した災害予防・予測などの取り組みが増えてくるかもしれない。
IBMとNASAは、2023年8月3日、世界最大となる地理空間AIファンデーション(基盤)モデルをAIプラットフォームであるHugging Face上で公開した。
このモデルは、NASAが持つ大量の衛星画像データの価値を引き出し、気候科学だけでなく、さまざまなビジネスユースケースに役立てるために開発されたもので、今年2月に初めて開発プロジェクトの存在が明らかにされた。
2月の発表では、IBMとNASAは、ペタバイト単位のテキストデータとリモートセンシングデータを分析するAI基盤モデルを開発し、AIアプリケーションの構築を容易にすることを目指すと述べていた。
なぜ機械学習だけでは不十分だったのか
ここでいう基盤モデルとは、文字どおりさまざまなAIアプリケーションの基盤となるモデル。ChatGPTのGPT-4やグーグルBardのPaLM2なども基盤モデルに分類される。たとえばGPT-4は、ChatGPTだけでなく、マイクロソフトの検索エンジンBingで利用されたり、APIを通じてさまざまなアプリケーションで活用されている。基盤モデルは、少ない量のラベル付きデータがあれば、膨大な量の生データを取り込み、データの基本的な構造を検出することができるという。これにより、NASAが持つ膨大な衛星データを活用することが可能になり、そこから災害対策・予測やビジネスユースケースなど、何らかの価値創出が起こることが期待されている。
基盤モデルが主流となる以前は、機械学習が利用されていたが、そのアプローチでは、ラベル付けされたデータが必要となる。衛星データ内の木や作物などを人間の専門家がセグメンテーションとラベル付けを行う必要があったのだ。しかし、コストがかかり過ぎるため、衛星データのほとんどが活用できていない状況だった。
NASAは現在、70ペタバイトの衛星データを保有しているが、今後の衛星ミッションを含めると、そのデータ量は、2030年までに600ペタバイトに達する見込みだ。
- 過去の洪水や山火事のマッピング
- 将来リスクが高い地域の予測
- 森林伐採の追跡
- 作物収量の予測
- 温室効果ガスの検出とモニタリング
- オープンソース化されており、誰でも利用可能
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