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8月24日、東京電力が福島第一原発敷地内に貯留されている「ALPS処理汚染水」の海洋放出を開始した。その影響は国内外に広がり、特に中国は日本政府の対応を猛批判している。反日運動や禁輸措置、迷惑行為が相次ぎ、根拠のない偽情報まで出回る始末だ。果たして日本政府はこの問題にどう立ち向かっていくのだろうか。
中国メディアで相次ぐ「日本批判」
データで語れ、しかし、説得力のないデータで独り言を言うな。核汚染水の海洋放出という重要な問題について、日本側は万全を期す前に軽率な行動をとるべきではない──そう日本に対して厳しく断じたのは中国・新華社通信だ。
記事では、東京電力が、過去に何度もデータを改ざんし、原発の安全上の問題を隠してきた「黒歴史」があるとして、東京電力による原発処理水の海洋放出を止めるよう呼びかけている。5月18日付の
記事だ。
他にも新華社は、以下のように報じて中国人民に処理水海洋放出の危険性をあおり続けてきた。
「特に福島の汚染水処理のように、生命と健康に重大なリスクをもたらすプロジェクトは、実施前にその正当性を評価する必要がある。しかし、福島の汚染水処理に関するさまざまな選択肢の中で、汚染水を海に流すという選択肢は最も正当性が低い」
「この『処理水』の処理方法として、蒸発させて大気中に放出する方法、電解処理する方法、パイプラインを通じて地中深くに放出する方法、固形化する方法など、さまざまな選択肢を提示しているが、このうち、海に放出する方法が『最もコストがかからない』とされている」
「日本政府と東京電力が原発汚染水を海に流すという選択をしたことは、極めて利己的な行為であり、本来日本が負担し吸収すべき原発汚染水の『リスク』を、太平洋沿岸諸国や島嶼国、さらには全世界に広げるものである。日本の “お得 ”は、海の汚染の可能性と海洋生物と人命への脅威を犠牲にしてのものであり、これは犯罪である」
新華社以外にも中国メディアは、今回の処理水の海洋放出について、厳しい姿勢が目立つ。
「日本人は “I’m faking it ”(私は嘘をついています)と平然と書いている」
「日本の東京電力(TEPCO)は初めてメディア取材を企画し、複数の外国メディアを招いて福島第一原子力発電所の内部を視察させ、(中国国営テレビ局の)CCTVを含む7カ国9社のメディアが視察を許可された。しかし、視察の結果は疑念を払拭するものではなかったばかりか、海外は日本が原発汚染水の海洋放出問題を明らかにごまかしていると感じている」(2023年8月28日・中国ニュースサイト「
搜狐」より)
中国側の止まらない暴動と過剰反応
たしかに、2011年に起きた福島原発の事故は世界的にセンセーショナルな報道がなされ、その後の民主党政権による稚拙な事後処理も含めて、近隣諸国に不安を与えるに十分なものだったのだろう。今回の騒動も、さまざまな陰謀論が飛び交っているが、背景には非常事態をきちんと処理できなかった東日本大震災当時の日本政府に責任の一端はある。
しかし、である。
まったく事実を踏まえない意味不明な中国側の対応には、あきれてしまうしかない。人民が暴動を起こすのは致し方がないのかもしれないが、中国政府もそれに追随する形で、日本製品の禁輸処置まで断行したのである。
新華社は恐ろしいまでに日本の一面のみを切り取る姿勢に徹しているようだ。海洋放出後の報道を見ていこう。
「福島第一原発を運営する東京電力には、いい加減な対応や隠蔽・ごまかしが多すぎるため、国民はこの主張を信じなかった。福島第一原発を運営する東京電力(TEPCO)には、いい加減な対応や隠蔽・ごまかしの『黒歴史』が多すぎて、もはや国民の信頼を勝ち取るのは難しい」
「『体質隠し』という言葉は、東京電力の体質隠蔽を批判する言葉として、各界で定着している」
「東京電力と日本政府はずっと、汚染水を海に放出することが『現実的な選択肢』だと信じてきた。反対の声を鎮めるために、東電はあからさまな嘘までついた」
新華社通信の手にかかると、処理水におびえ、怒っているのが日本人の側であるかのような書きぶりになってしまう。怒っているのは、中国人だけではない、世界も、そして日本でもみんな処理水には反対しているのだという報道姿勢である。
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