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- 2023/03/17 掲載
「さすが」のトヨタとソニー、 社長交代にみる“昭和型企業”の生き残り戦略とは
大関暁夫のビジネス甘辛時評
ソニーの社長人事は「院政」なのか
ソニー社長の座を譲った吉田憲一郎氏は、ソニー復活の足掛かりをつくった平井一夫氏からのバトンを受け、2019年に社長に就任。グループ内の相乗効果を重視した戦略で順調に業績を伸ばし、後継はいよいよソニーらしい技術者の登板かと筆者は思ったのですが、ふたを開けてみれば吉田氏と同じくCFOとして企業戦略を支えてきた十時裕樹氏という、少々意外な展開ではありました。吉田氏と十時氏は一度グループ企業に出て外からグループの成長戦略を支えつつ、ソニーが復活に向けて動き出した同じタイミングで本体に戻りグループ経営を主導した、というところまでキャリアが合致しています。
吉田氏は社長を十時氏に譲りつつも、自身は代表取締役会長として引き続きCEOを兼務します。前任の平井氏が、社長退任と同時に代表権のない会長に退いたのとは対照的な対応と言えるでしょう。ただ、代表権を持つ会長でCEOと聞くと、社長の座は譲りつつも実質トップを続ける院政経営かと思われるかもしれませんが、それはまったくの見当違い。「外部環境変化が激しくなっている中で、経営体制を強化する必要があると判断した」との吉田氏の会見からも分かるとおり、二頭体制での経営分業によるマネジメント強化を図る狙いがあるようです。
吉田氏が会長としてCEOを兼務しながら同じタイプのリーダーを後継社長に据えたというのは、まさに今の戦略を強力に推し進めるための経営分業を考えてのことと言えるでしょう。そのために、自身のキャリアに最も近い人物、ある意味自身の「分身」とも言える存在を後任に据えた。吉田氏の意図が明確に見える後任人事ではないか、と思うのです。
経営体制の再編に尽力した吉田氏
振り返れば、社長在任5年間で吉田氏は、激動の時代を乗り切るためのパーパス(存在意義)を策定しテクノロジーとエンタメの融合という大命題のもと、エレキ、エンタメ、金融など多岐にわたるグループ内事業の相乗効果醸成を狙った経営体制を再編。並行して新規事業育成による成長戦略も積極的に推し進めました。その中核をなすものが、ホンダとの業務提携によるEV製造をはじめとしたモビリティ事業であり、後任の十時氏がこの事業の立ち上げを主導してきたという点も今回の人事との絡みで見逃せません。すなわち現時点でのソニーはパーパス経営を推し進めつつ、コングロマリット・プレミアムを生むようなグループ運営の中で新規事業にも注力するという路線があるように見受けられます。
しかし、いかに吉田氏が優れた経営者であっても、これをワントップ体制で前に進めていくには、あまりにも荷が重い。そこで、「分身」との経営分業を図るべく二頭体制へ移行する。大激変の時代にあって、ソニーが日本をリードする昭和企業として、引き続き発展を目指すからこその決断であったと言えるのではないでしょうか。 【次ページ】「カーガイ」のトヨタ新社長
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