• 2006/04/18 掲載

栗本慎一郎氏インタビュー~「邪馬台国」は正確には「邪馬壹(ヤマイ)国」です(2/2)

Business CoffeeBreak ~歴史に想いを馳せる~

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Q.ご自身の研究とは別に、雑誌を創刊されるというお話をお伺いしたのですが。

【栗本】
 今年の秋に創刊して、まずは年2回くらい出す予定です。きっかけは、中央大や明治大の学生運動の仲間たちが僕をネタに集まろうという話から始まったんです。でも私だけがネタになるのはいやだから、みんなで雑誌でもやろうと。簡単に言ってしまえば“遺稿集”の雑誌ですよ。

ちょうどその前後に、昔の知り合いが何人も死んだんです。訃報を聞くたびに「死ぬ前にこの日本、この社会に対してあいつは何を考えていたのか」と知りたくなった。私のように本を書いて発言していれば、たとえ私が明日死んでも言ったことは残る。でも仲間のなかには何も言わずに死んでいく人がたくさんいる。そこで遺言を集めた雑誌を作ろうとなったわけです。

名前は「流砂(流沙)」。

「流砂」とは中国西域の砂漠地方を指す言葉で、いま私が研究しているシルクロードに関係しています。 それに60年代左翼を略した「ろくさ」をかけています。ただ、60年代以降右に傾いた人でも、60年代に社会や自分の人生について真剣に考えて闘っていれば登場してもらってかまわない。

私個人にとっては、非常に象徴的なことに大学時代に机を並べた人間が総理大臣(=小泉純一郎)をやっています。かなりの人が引退している一方で活動している人もいて、この世代は極端です。
遺稿集であると同時に60年代を総括し、同世代へに対し「まだ少し生きなきゃいけないのだから、お前ら何か言いたいことはないのか」と問いかける雑誌になるでしょうね。
   今回紹介した、栗本氏の著書「シリウスの都 飛鳥」はアマゾンよりご購入いただけます。  
 


Q.今後、著作のご予定などはありますか。

【栗本】 まずは「シルクロード流域」の本です。さきほども言いましたが、私は、本当のシルクロードはもっと北を通っていたと考えています。これは、ウズベキスタンの考古学協会の主張と同じです。

一般にはシルクロードといえばNHKで放映されていたものが浮かびますが、あれは中国の考古学協会が主張しているのをそのまま受け入れたもの。
中国の考古学協会の協力を得て番組を作ったものなんですよ。
中国は自国に有利なようにシルクロードの東の起点を「長安」(現・西安)だと唱えています。中国説のシルクロードは、長安から始まって中央アジア各地を通り、ローマまで至るというルート。

でも私やウズベキスタンの考古学協会は、東は中国の上を通って、バイカル湖を通って日本海を渡ったという説を主張しています。西方向へは、ウズベキスタンへ行きサマルカンドに降りるまでは中国説を認めていますが、その後はローマには行かず、カスピ海、コーカサス地方、トルコの半島アナトリアを通ってビザンチウムまで行ったと考えています。

これから、キルギスのアク・ベシム遺跡に発掘調査に行くことになっています。コーカサス地方にも近いうちに行きます。アルメニアなどコーカサス地方を行き終わったら、「新のシルクロード」という関係の本を写真込みで出版したい。本気で写真を本気で撮っているので、写真込みの本になる予定です。  

Q.『シリウスの都 飛鳥』では最後に「日本の王権概念や価値観の起源が東イラン高原にたどりつくはずだ」と結んでいます。現在のシルクロード研究は、そこから発展したものと考えてよいのでしょうか。

【栗本】 そうです。東イラン高原では、紀元前3世紀頃にパルティア帝国が登場します。トルクメニスタンにはペルセポリスを筆頭に、パルティア帝国の首都がいくつかみつかっています。このパルティアでシルクロードが形成されたというのが私の説なんです。

しかも、このペルセポリスと日本の前方後円墳は、なぜか同じように真北から西へ20度傾いて建てられています。方位に価値観の象徴がぶちこまれているんですね。この方位のことを聖方位と呼んでいますが、これがキーポイントです。

パルティア帝国を中心に聖方位が広がっていく。弥勒信仰の仏教とともに聖方位が中央アジア近辺まで来て、そこでスキタイと融合して、バイカル湖を通り、ついでに白鳥伝説も拾って、日本の北まで来る――これが私の考える実際の歴史です。

パルティア、日本、スキタイ、これらぜんぶをまとめた本をあと2、3冊は出すつもりです。それで大きな道しるべを置いたら、もうこの分野については語りません。 きちんとした歴史観を打ち立てたら、あとは私の本をネタにみんなが好きに調べてくれればいいと思っています。


【インタビューア:澁川祐子】

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