- 2006/04/14 掲載
企業価値を向上させるM&A戦略(4/4)
異文化時代のM&A
UNCTAD調査によれば、87年に862件であった世界のM&A件数は、00年に800件近くに達し金額も1兆ドルを超えた。図の通り、発展途上国で行われるM&Aが増えており、M&Aを仕掛ける先進国企業が発展途上国の異文化に触れる機会が増えている。M&Aは企業価値の最大化を図るための合理的な手段であるが、クロスボーダー取引の場合、経済合理性だけでなく相手国の実情や商慣習を考慮しなければならない。M&Aによる異文化との相克の例として、エンロンのダボール(Dabhol)発電所プロジェクト(インド・マハラシュトラ州)がある。世銀でさえ採算に懸念を示したダボール発電所プロジェクトは、地場の消費者に負担しきれない高発電コストを前提としていたため、95年に売電が始まるとすぐに電力代金の未払い問題が発生した。
エンロンはあらゆる手段を動員し、売電先の州電力庁などへ支払い履行を求めたが、デモや人権問題も勃発し、ダボール発電所は01年1月デフォルト状態へ追い込まれた。クロスボーダーM&Aには、経済的なリスクに加え異文化とどう折り合いをつけるかという古くて新しいマネジメント課題│カントリーリスクが伴うのである。

世界のM&Aの件数(対数表示)
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