ストラテジック・リサーチ 森田 進
ストラテジック・リサーチ代表取締役。各種先端・先進技術、次世代産業、IT活用経営、産学官連携に関するリサーチ&コンサルティング活動に取り組む。クラウド、仮想化プラットフォーム、エンタープライズ・リスクマネジメント/BCP、モバイル・プラットフォーム、情報化投資の各分野において研究およびエヴァンジェリズム活動を展開し、実績を積む。
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前回の“BCP2.0”へ向けた仮説・提言で、現在、BCPやエンタープライズ・リスクマネジメントを取り巻く意識がどのように変化しつつあるのか、その端緒を掴めてきたと思う。そこで今回は、BCP2.0で重要な軸となる、「組織的対話やステークホルダー間の効果的な関与のあり方」をさらに踏み込んで解説することにしよう。言うまでもなく、有事の際のコミュニケーションは非常に重要であるにもかかわらず、最新のコミュニケーション技法はBCPやBCMで十分に取り入れられてこなかった。そこで今回は「リスク・コミュニケーション」について、EAP(従業員支援プログラム)の世界で経験豊富なコンサルタントとの意見交換の対談形式で取り上げる。
企業経営でもそうだが、今日のように事業環境の変化が激しい時代では、BCPでも頭を柔らかくし、柔軟な対応力を身に付けていく必要がある。前回「経営上のノウハウと“危機に強いBCP”とは正比例する」と書いたが、これは「危機(リスク)の多様化に対する対応力・耐性とは、組織構成員一人一人のリスク全般に関する“意識の深さ”や“柔軟な発想力”と比例する」とも言い換えられる。さらに踏み込めば、リスクマネジメントのパラダイムの変化を察し、BCPも柔軟な構想力が必要となると言ってもいい。そこで今回は、先日筆者が実際に行ったBCPのセミナー運営企画者とのディスカッションを再構成し、BCPで焦点をあてるべきポイント、本社一極集中からの脱却を図る具体的な動きなどを紹介しよう。
日本社会全体に大きな教訓を残した東日本大震災。震災による直接的な被害も甚大だったが、その後原発事故とそれによる風評被害、サプライチェーン危機などの連鎖的な脅威が立て続けに起こり、「複合災害」による損害によって、「使えないBCP」が露見する事態となっている。本連載では、東日本大震災後に大きくクローズアップされた事業継続計画(BCP)のあり方、BCPの見直し、さらにはBCP拡張の展望について、さまざまな角度で取り上げ、問題点を探る。初回である今回は、筆者が関東・中部地方に本拠を持つ情報関連機器メーカーから相談を受けた際のディスカッションを再構成して、なぜ「従来型のBCP」では役に立たなくなる恐れがあるのか、問題点などをチェックしよう。