経済ジャーナリスト 寺尾 淳
経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。
春の進入学シーズンは新しく楽器を始める若い世代が多く、楽器店は今が書き入れ時。しかし、少子高齢化が進んで国内先細りの日本の楽器メーカーは、世界的なブランドを持ちながら楽器の製造・販売とその周辺ビジネスだけでは成長が見込めなくなってきている。そこで、最大手のヤマハはAV機器、半導体、ルーターなどのICT機器、インテリア、英語教室、ゴルフクラブにリゾート開発を展開。カワイもピアノ製造の端材を使った「跳び箱」に始まるスポーツ・フィットネス用品や体操教室、素材加工事業を手がける。ローランドは関連会社だったローランド・ディー・ジーが「3Dプリンター」で脚光を浴びるなど、それぞれ事業の多角化を進めている。
「一億総活躍」「介護離職ゼロ」政策に後押しされ、大企業の介護事業参入が2000年の公的介護保険制度開始時の「第1のブーム」以来の「第2のブーム」を迎えている。その中で今年、業界第2位への躍進が確実なのが損保ジャパン日本興亜ホールディングス(損保ジャパン)だ。2015年10月にワタミの介護事業を買収し、続いて12月には上場企業のメッセージの買収を発表している。大企業が介護事業に参入する狙いとしては、介護機器や介護保険など「関連商品の販売促進」や遊休不動産の有効活用もあるが、損保ジャパンでは介護事業を経営の第4の柱に位置づけると表明し、純粋に業界の将来の成長に期待して大型のM&Aに踏み切った。その点、他社とは「本気度」が違っている。
「団塊の世代」に始まる戦後世代は、テレビと一緒に大きくなった。プロ野球中継で王や長嶋の豪打で元気をもらった後、3アウトチェンジになると流れる自家用車やビールのCMで、テレビ局も金銭的な元気を注入された。そうやって民放テレビ、特に東京にあるネットワークキー局5社は、広告収入をたっぷり吸い込んで巨大化した。だが今、「お茶の間」は死語になり、テレビもマスメディアの絶対的な王者ではなくなった。それを反映して最近の各社の業績は上下の変動が激しくなり、放送の「本業」では稼げなくなった企業も出て、リモコンのボタンのように横並びではなくなっている。「テレビ離れ」とも言われる中、在京キー局5社はこれからどんな方向に活路を見出そうとしているのだろうか?