中森 勇人
中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。
公式サイト http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/
世界陸上モスクワ大会で銅メダルを獲得した福士加代子選手。彼女のガッツポーズはこれからの女性の活躍を予見させるものがある。
東大阪市にある株式会社日清精工でも女子社員の自由な発想に投資することでヒット商品を生み出している。代表取締役である岩谷清秀社長(42)は「うちは金型が本業ですが、注文を待つ仕事が多い。でも、このご時世ですから攻めていかないとジリ貧になるのは目に見えています」と新規事業に意欲を示す。
この意をくんだのが勤続30年の右田和代さん。当時、芸術大学に通っていた娘さんを引っ張り出して業界でも初めてのデジタルフリーデザイン(DFD)でのシボ切削システムの導入に取り組んだ。右も左もわからない中、このシステムにポンと500万円を出したのが岩谷社長。右田さんは「社長は怖いもの知らずやなぁ」と感心するとともに失敗できないという責任感を持ったのだという。
しかし、この後、右田さんと娘さんの女子力が次々と新製品を世に出していくことになる。
今年で30周年を迎える東京ディズニーランドは連日の賑わいを見せているが、これを支えるのがキャスト(従業員)のホスピタリティー精神。多くのキャストがディズニーファンであることで高いモチベーションが生み出されるのだという。「自分自身が楽しみながら続けられ、お客さんも喜んでお金を払ってくれる。そんな素晴らしいビジネスができればいいですよね」と話すのは全日本趣味起業協会で代表理事を務める戸田光弘氏(46)。趣味を仕事にする「趣味起業」が注目を集め、戸田代表の元にはマスコミ取材や講演依頼が後を絶たない。趣味起業とはあまり聞きなれない言葉だが、その成功率はなんと80%。一体その秘訣はどこにあるのだろうか。
世界一高いタワーとして東京スカイツリーがギネスワールドレコードに認定され、日本一高いビルとしてあべのハルカス(大阪市阿倍野区)が開業した。日本一を体験しようと現地では観光客が押し寄せ、入場者数も記録的に伸びている。あべのハルカスからほど近い通天閣でも日本一を売りに人気が急上昇している。開業100周年を迎える老舗タワーの年間入場者数がここにきて140万人を越える絶好ぶり。通天閣観光の西上雅章社長(63)は「高さを売りにする時代は終わりました。私たちは大阪の生活や文化を売りにして笑いやコテコテのコンテンツを提供しています。これが結果的に“日本一おもろいタワー”になりました」と話す。昭和62年に取締役就任来一貫して笑いを追求。一時は50万人に落ち込んだ入場者数をV字回復させた。
天才発明家で画家でもあるレオナルド・ダ・ヴィンチの手記に「幸運の神に後ろ髪はない」という諺がある。猛スピードで駆け抜けるチャンスの神(カイロス)の後頭部は禿げている、だから出会えば迷わず前髪を掴めというわけだ。このカイロスを100%捕まえるナニワで噂のダヴィンチがいる。大阪梅田に本店を構えるフォーマル専門店「ノービアノービオ(NFL)」を経営する川辺友之社長(41)は14年前の楽天市場店のオープンを皮切りに、梅田本店、東京南青山店、縫製工場、お直し専門店(共に大阪谷町)、アパレル配送センター(東大阪)、卸売事業、ウエディング通販など矢継ぎ早に事業を拡大。独立8年でメンズフォーマルウエアのトップ企業にまで成長させた。
2013年は環太平洋連携協定(TPP)元年になるとの声が高まる中、農林水産業や伝統産業の関係者は危機感を募らせている。通天閣のお膝元、地下鉄恵美須町駅前に店舗を構える有限会社澤野工房は、大正2年から続く履物店。澤野由明社長(62)で4代目になる大阪最古の老舗である。TPPの影響が懸念されるところだが、澤野工房の業績は下がるどころか右肩上がり。澤野社長は「オイルショック以降、低迷が続き廃業する同業者は後を絶ちません。澤野工房も例外ではなく何度も危機に見舞われましたが、下駄屋のビジネスモデルで何とかしのいできました」と意味深発言。果たして“下駄屋のビジネスモデル”とは一体どういったものなのだろうか。