• 2024/10/10 掲載

焦点:セブン&アイ、コンビニ集中も成長鈍化 活路は新業態と海外か

ロイター

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Ritsuko Shimizu

[東京 10日 ロイター] - セブン&アイ・ホールディングスがコンビニエンスストア専業体制を鮮明に打ち出した。スーパー事業への外部資本導入の前倒しなど、これまで「物言う株主」の圧力で進めてきた改革を加速し、カナダ小売大手アリマンタシォン・クシュタールの買収提案に対抗する。しかし、そのコンビニ事業が国内外とも鈍化。国内で新業態を展開したり、海外事業の利益率を向上するなど、企業価値の向上につながる施策を同事業で実行できるかが試される。

<スーパー事業の改革はファンドに>

祖業のイトーヨーカ堂を含め、外食事業や金融などを抱えるコングロマリット(複合企業)から決別することになる。主力事業に経営資源を集中し、採算性の低い事業を分離するのは買収提案を受けた企業が取る対抗策の「王道」とされる。流通アナリストの中井彰人氏は「買収提案への対抗策として言わざるを得なかったのだろう。結果としてどうはねるか分からないが、できる手としてはそれしかない。やむを得ない判断」とみる。

不採算のスーパー事業の構造改革は以前から急務となっていた。2025年度までに33店舗を閉店させるなど、24―26年度に改革を進めて27年度以降の上場という青写真を描いている。首都圏スーパーストア事業の25年度のEBITDAを22年度比3倍の550億円に引き上げる計画だったが、24年度のEBITDA予想は282億円に過ぎない。

スーパー事業は市場からも改革の遅さを指摘されており、株価低迷の一因になっていた。今回、コンビニ以外の事業で構成する中間持株会社の25年度のEBITDAを1000億円(23年度は606億円)とする計画を打ち出した。

ある金融関係者は、思うように進まないスーパー事業の構造改革をファンドに任せ、セブン&アイはコンビニ事業の価値向上に経営資源をつぎ込みたいのだろうと分析する。

<国内は都市型新業態>

ただ、肝心のコンビニ事業の成長が思うに任せない状況にある。国内コンビニ事業のセブン―イレブン・ジャパンの既存店売上高は、3―9月の累計が前年同期比0.2%減だった。新規の出店余地が限られる中、成長には別の戦略が必要となる。

競合のイオンは単身者や高齢者が増加する都市部で小型食品スーパー「まいばすけっと」の拡大に力を入れる。吉田昭夫社長は9日の決算会見で、まいばすけっとは都市にフィットしており、コンビニよりもディスカウントに寄った店舗だとし、「重点投資していきたい。(8月末で1175店舗を)いち早く倍にする設計をしていく」と意気込む。プライベートブランドの売上構成比を上げることで、高い利益率も確保できる。

セブン&アイも同様の業態「SIP」を2月に出店している。食品スーパーの需要を取り込む新業態は、スーパーとコンビニの両方のノウハウを持つ企業体しか対応できない店舗で、成長余地も大きい。

アナリストの中井氏は「これまではワンフォーマットだったが、コンビニという土台を使いながら、第2のコンビニを作っていく。そういう成長戦略を描くことはできる」とし、そのためにも「ヨーカ堂をはじめとするスーパーストアを完全に切り離してしまうと、間違いなく次の戦略が打てなくなる。資本のつながりは別として連携していける関係を続け、次の手を打っていく筋立てが必要」とみる。

<海外の利益率どう向上>

もう1つの成長戦略は海外市場にある。10日に発表した決算では、米個人消費の落ち込みが想定以上のペースで継続していることを背景に計画を下方修正した。10日にはROIC(株主資本利益率)を30年度に10%(23年度6.5%)に引き上げるため、業績不振店舗の閉鎖や商品原価の改善、バリューチェーンの効率化に取り組む方針を示した。

セブン&アイは、4月にセブン―イレブンオーストラリアを100%傘下に収め「日本式のコンビニ展開の試金石」(幹部)として取り組んでいる。これまで主流だった現地企業へのライセンシー付与という形から大きく踏み出した格好だ。特定の地域に集中して出店するドミナント戦略などは難しく、日本で成功したコンビニをそのまま海外に持ち込めるわけではないが、品質の高いコンビニフードの取り扱いの拡大などを図っていく方針だ。

米投資ファンドのバリューアクト・キャピタルによる圧力、クシュタールによる買収提案と外圧にさらされ続けたセブン&アイは、自ら決断できなかったコングロマリットの解消へと進むことになった。

クシュタールはセブン&アイがいちど拒否した5.8兆円程度の買収提案を出し直し、関係者2人によると、7兆円程度の額を新たに提示した。

UBS証券シニアアナリストの風早隆弘氏は、「(7兆円の提示が事実なら)上場来高値を上回る水準になる。事業構造の見直しによるROIC(投下資本利益率)やROE(自己資本利益率)の改善に加えて、中核事業である国内コンビニ、海外コンビニの成長戦略の実現による業績拡大に対する同社からの追加的な施策に注目する」と話している。

(清水律子 編集:久保信博)

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