- 2024/07/30 掲載
アングル:巨大ハイテク株の割高感に警戒も、米株不安定化で
[ニューヨーク 29日 ロイター] - 米国株が最近大きく売られたことで、年初からの相場上昇をけん引してきたエヌビディアやマイクロソフトなど巨大ハイテク企業の割高感に一段と注目が集まっている。
S&P500種情報技術株指数の1年後の利益予想に基づく株価収益率(PER)は、足元の株価急落後でも29.5倍と、今月付けた20年ぶりの高水準に近い。
市場全体を見ても歴史的な割高水準で、LSEGのデータによるとS&P500種総合指数の予想PERは20.7倍と、長期平均の15.7倍を大幅に上回っている。
モーニングスター・ウェルスの米州最高投資責任者、フィリップ・ストラエル氏は「現在の市場は幅広いレベルでかなり割高に見える」とし、米経済の「軟着陸」や企業業績への期待が高いだけに、「失望が訪れる可能性が生じている」と語った。
人工知能(AI)ビジネスへの期待などから、今年はハイテク、グロース(成長)株が大幅上昇し、半導体大手エヌビディアは年初から130%近くも上昇している。
しかし最近相場が不安定化したことで、投資家は以前より割高銘柄を警戒するようになった。26日までの週には、グーグルの親会社アルファベットと電気自動車(EV)大手テスラの決算をきっかけに相場が下落し、S&P500とナスダック総合指数は24日に2022年以来で最大の下げ率を記録した。もっとも年初に比べると、それぞれ14.5%と15.6%上昇している。
29日からの週にはアマゾン・ドット・コム、アップル、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズの決算発表が集中する。
米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しや米大統領選の行方などを巡って市場が荒れた場合には、バリュエーションの高い株に処分売りが出かねない。
米企業業績への期待は高い。LSEG・IBESによると、S&P500社の第2・四半期利益は前年同期比12.1%の増加が予想されている。これまで四半期決算を発表した206社のうち、78.6%の社で利益がアナリスト予想を上回った。この比率は過去4四半期とほぼ同じだ。
多くの投資家の注目はハイテク株と、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる超大型株の動向に集まっている。
足元の市場心理の変化は、アルファベットの決算発表に対する相場の反応によく表れていた。売上高が予想を上回ったにもかかわらず、同社のAIインフラ投資が利ざやを圧迫しかねないとの懸念から、同社株は3営業日で8%も下げた。
ホライゾン・インベストメント・サービシズのチャック・カールソン最高経営責任者(CEO)は「ハイテク株のハードルは相当高い。驚くほど良い決算を出さない限り、売りを浴びやすい」と指摘した。
これから注目を浴びるのは、時価総額がともに3兆ドルを超えるアップルとマイクロソフトだ。
LSEGデータストリームによると、アップルの予想PERは30倍で、過去5年平均の25.5倍、10年平均の19.6倍を上回っている。マイクロソフトは31倍で、5年平均は29倍、10年平均は約25倍だ。
足元の市場では大型ハイテク株を処分し、小型株やバリュー株など年初から振るわなかったセクターに移動するローテーション取引が見られる。代表的な小型株指数であるラッセル2000は10日以来10%上昇したのに対し、S&P500は3%下落した。
オックスフォード・エコノミクスのアナリストチームは26日のノートで「他のセクターに(利益の)伸びが戻るにつれ、投資家が割高なハイテク銘柄から他に移動する動きは続くだろう」と予想した。
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