- 2024/05/14 掲載
インタビュー:日銀は6月に国債買い入れ減額か、利上げは9月と予想=門間元理事
[東京 14日 ロイター] - 元日銀理事の門間一夫氏(みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト)は14日、ロイターのインタビューで、日銀は6月の金融政策決定会合で国債買い入れの減額を決める可能性があると話した。保有残高の年間減少ペースを示すことが議論される余地もあるとした。一方、追加利上げは9月と予想。賃金、サービス価格の上昇や個人消費のプラス転換を実質国内総生産(GDP)などの統計で確認すべきだと話した。
<国債保有残高の減少ペース明示が「メッセージとして明確」>
日銀は13日、残存5年超10年以下の国債買い入れのオファー額を4250億円とし、前回の4750億円から減額した。
門間氏は、3月の決定会合後初の減額となった13日の買い入れについて、日銀が正式に国債買い入れ額を縮小する「準備段階」に入っていることを示すものだと指摘した。日銀は地ならしを続け、6月の決定会合で現行の月間買い入れ額6兆円を「減額する可能性は十分ある」と述べた。
門間氏は、日銀は決定会合まで1カ月間の長期金利の変動を見ながら考えることになるとした上で、月間買い入れ額を4―5兆円程度に減らすか、もしくは年間の国債保有残高の減少額を示す可能性もあるとみている。
2013年、黒田東彦前総裁の下で日銀が量的質的金融緩和(QQE)を始めた当初、長期国債については「保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買い入れを行う」とし、年間のネットの増加額を示していた。
門間氏は、日銀が国債保有の減少に向けて、償還分を踏まえた年間のネットの減少額を示すやり方も「議論する余地はある」と指摘。こちらの方が「メッセージとして明確だ」と話した。
<追加利上げへ、消費回復の「説得性」が必要>
門間氏は、日銀は9月に0.25%に政策金利を引き上げると予想した。前提として、賃金、サービス価格、個人消費について、統計データを確認する必要があるとした。
春闘で示された高い賃上げ率が毎月勤労統計に反映されてくるのは7―8月分にかけてになるとしたほか、サービス価格については足元で品目ごとのばらつきが大きく、新年度入り後、今年の賃上げがサービス価格に広く反映されるか、7月分くらいまでのデータを確認する必要があると述べた。
さらに「いくら賃金や物価が少し良くなっても、実際に個人消費につながってこないとなかなか(次の)利上げの説得性は強くならない」と指摘。15日発表の1―3月期実質GDPでは個人消費が4四半期連続のマイナスになることが見込まれていることから、8月に発表される4―6月期の実質GDPで個人消費のプラス転換を確認する必要があると述べた。
門間氏は、マイナス金利の解除は実体経済への影響がほぼ出なかったが、0.25%への利上げは「住宅ローンや中小企業の借入金利に影響が出てくる」とし、「多少困る人が出てきても、国民全体のためには利上げをしなければならないという理屈がつかないと、ここから先の利上げはそう簡単ではない」との見方を示した。
一方で「日銀が円安の影響だけを取り出して考えることはない」と指摘。日銀は政策運営に当たり、基調的な物価上昇率がどうなるかを注視しており、「円安の影響込みで基調的な物価上昇率がどうなるかという点に注目するだろう」と述べた。
<利上げパス、来年中に0.75%も>
門間氏は、日銀の今後の利上げパスについて、9月に0.25%とした後、来年の春闘への期待が高まれば来年1―3月に0.5%へ利上げ、その後は情勢次第で来年中に0.75%まで政策金利が到達する可能性があると予想する。
その一方で、政策金利の到達点については「2―3割の確率で、2%程度まで行ってしまう可能性もある」と話す。日銀が2%目標実現への自信を深めたタイミングで資源価格の高騰や供給制約等の要因が重なり、ビハインド・ザ・カーブに陥ることを意識して急速に利上げしていく可能性があるとした。
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