- 2024/04/10 掲載
アングル:円買い介入効果、市場で議論百出 「おおむね5円」とも
[東京 10日 ロイター] - 政府・日銀による円買い介入への緊張感が続く中、為替市場では、過去の実績や米国の為替操作基準などを参考に、その効果を分析しようとする試みが相次いでいる。現局面で実施された場合、ドルは5円前後下落するのではないか、との試算も出回っている。
実際の影響は、実施額のみならず、その時々のドルの方向感や水準、取引状況、参加者のポジションの偏り、当局の注文の出し方など、多くの要素に左右される。影響を事前に測るのは極めて困難だが、関心が高さは参加者の警戒感がそれだけ強いことの表れとも言えそうだ。
<介入1兆円でドル1円下落>
遡及可能な1991年4月以降、日本政府がドル売り/円買い介入を行った日数は35日。92年頃まで1日の介入額は数百億円程度だったが、その後は為替取引量の増大などに合わせて次第に規模が膨らみ、24年ぶりの円買い介入となった2022年9月22日は2.8兆円、10月21日は5.6兆円と異例の巨額介入となった。
9月の介入時、ドルは日中に145円後半から140円前半へ5.5円、10月は151円後半から144円半ばへ7.4円下落した。介入額は1兆円に満たなかったが4.4円下落した10月24日も含めると、22年の介入は1日平均3兆円程度で、押し下げ率は3.8%だった。
この下落率を単純に現在の151円後半に当てはめると、5円強ドル安/円高に振れた146円前半が介入時の下値の目安となる。これらも踏まえ、市場では「円売りに参戦した向きが多いとされる148円以下で、介入に備えた買い注文を入れる動きがすでに出ている」(外銀関係者)という。
市場では、昨年来の経緯もあって「おおむね介入1兆円で1円程度のドル下落」(邦銀アナリスト)との声も出ている。
<介入上限11兆円説>
介入の威力を大きく左右する規模に関しても思惑が出回っている。
バンク・オブ・アメリカの主席日本為替金利ストラテジスト、山田修輔氏が注目するのは、米財務省が為替報告書で定める操作国認定基準のひとつの項目。「過去12カ月間で8カ月以上外貨買い介入を実施し、総額が国内総生産(GDP)の2%を超える場合」と定めている点だ。
日本はすでに、3つの基準のうち貿易黒字、経常黒字の2つに抵触している。「緊密な日米関係を踏まえると、日本が直ちに操作国認定されるわけではないだろうが、日本当局は可能な限り、介入の頻度と規模を基準より低くするのではないか」という。
日本が22年に実施した介入は9─10月の2カ月連続で、合計額は9兆円強だった。23年の実質GDP558兆円の2%は、およそ11兆円。介入を1日で終わらせないようにするためにも、山田氏は「当初の介入規模は2─4兆円となる」と予測する。
ただ、この操作国基準にある「外貨買い」は、操作国の自国通貨売り/外国通貨買い、つまり日本なら円売り/ドル買い介入を意味する。自国通貨を切り下げて輸出競争力を高める試みを排除することが狙いであるため、今回のような円買い/ドル売り介入は該当しないとする見解もある。
<米CPI後が目先最大の注目点>
ドルは3月下旬以降、34年ぶり高値圏の151円台に張り付く展開が続いている。防衛ラインと市場が見る152円超では、いつ介入が入ってもおかしくないとの声が依然大勢だ。一方、上昇ピッチが鈍いと押し下げも難しくなるため、実弾投下は152円を超えて円売りが勢いづいた機会を狙うのではないか、との予想もここにきて増えてきた。
スタンダード・チャータードのG10通貨調査責任者、スティーブ・イングランダー氏も、介入は相場急変が予想される「10日発表の米消費者物価指数(CPI)を待つのではないか」とみる。ただし「CPIが上振れれば(ドル売り介入は)ファンダメンタルズに抗することになるので、難易度が増す」側面もあると警鐘を鳴らす。
いずれにしても、為替介入で円安を抑制できたとしても、効果は一時的でトレンドを変えることは難しい、というのが市場の一般的な見方だ。
(基太村真司 編集:橋本浩)
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