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  • 2022/11/04 掲載

保険証廃止で激論も…「誤解だらけ」のマイナンバーとマイナンバーカード

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政府が紙(印刷物)としての保険証を廃止してマイナンバーカードにその機能を含ませると発表した。この方針はマイナンバーが導入された当初から例示されていた応用例の1つだ。。しかし、メディアやSNSではセキュリティ上の問題、プライバシーや人権にかかわる問題として改めて議論や論争が起きている。誤解や誤報も多い中、そうした情報に踊らされないためにも、マイナンバーやマイナンバーカードの技術背景の整理をしておこう。
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保険証廃止でマイナンバーカードを巡る議論が紛糾している
(Photo/Getty Images)

マイナンバーカードはマイナンバーを保存するカード……ではない

 印刷物としての保険証を廃止して、マイナンバーカードに統合するという政府の発表は、各方面に議論を呼んでいる。

 医療業界からはシステム対応や現場の混乱を指摘する声があがっている。閣議決定で議会での議論、国民への説明がなく強制になっていることを問題視する専門家もいる。保険証の統合は良いが、国民に選択肢を残すべきという意見や、ID統合や機能集約は紛失・盗難時の影響が大きい(再交付まで医療が受けられなくなるなど)「病気などのプライバシー情報が政府の捕捉される」という声もある。

 それぞれもっともな意見だが、一部には技術的な理解不足による誤解や、リスクの過大評価(過小評価もあるが)も見受けられる。

 たとえばカードの紛失問題は、保険証やマイナンバーカード以外でも発生する。緊急を要する場合の処理についての議論は必要だが、解決不能な問題ではない。マイナンバーカードの主な機能は「マイナンバーをよりどころに個人の真正性=本人確認を行う」ことだ。本人確認のキーとなっているのは、マイナンバーとは独立した公開鍵基盤(PKI)を使った電子署名である。

 マイナンバーカードには便宜上、券面とICチップにマイナンバーが記載されている。加えて、マイナンバー導入時に「カードに印刷されたマイナンバーは他人に見せてはいけない」という運用がされていたことが、現在の混乱を招いている側面もある。

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マイナンバーカードの「役割」と「リスク」を冷静に整理する
(Photo/Getty Images)

分散している同一人物の情報を連携させる

 マイナンバーは、国民1人ひとりに採番された固有の番号だ。つまり特定個人を示すIDである。米国などのSSN(ソーシャルセキュリティナンバー)と対比されるが、マイナンバーはSSNに相当する国民IDと言うことができる。

 マイナンバーは国民と1対1で対応する番号だが、それ以上でもそれ以下でもない。マイナンバー制度は、その番号を企業の社員番号やネット上のトラッキングなどに利用することは禁止しており、政府もその番号をキーとしたデータベースを作ることはできない(マイナンバーと個人名・生年月日など基本情報はJ-LIS、地方公共団体情報システム機構が管理している)。マイナンバーの目的は、省庁や自治体が個別に管理している国民の情報(保険証、住民票、パスポートなど)を、同じ人の場合に連携しやすいようにすることだ。

 ある省が保有する国民Aさんの情報と、別の自治体が保有するA’さんの情報が、同一人物かどうかを判定する基準として考えられたものがマイナンバーだ。現状、2つの組織で管理されたデータベースに、同姓同名、同じ生年月日、同じ性別の登録があっても、それが同じ人間なのかは確定できないのだ。

【次ページ】実はカードにマイナンバーを記載する意味はない?
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