• 会員限定
  • 2022/05/16 掲載

テンセントや三井物産らが語る「メタバース」、“死の谷”を超えるための要素とは

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
VRなどのバーチャル技術は、オンラインゲームによって実現、普及した側面がある。メタバースの普及を考える際、ユーザー体験はオンラインゲームとどう差別化されるのか。そして、メタバースは“死の谷”を超えるための要素とは何か。「バーチャルマーケット」などのVRイベントを手がけるHIKKY Chief Sales Officer 角田 拓志氏、VR/AR/VTuber専門メディアを展開するMogura代表取締役 久保田 瞬氏、テンセントジャパン Cloud Head of Solutionアーキテクト 付昂(ジミー)氏、三井物産 トランスリージョナルマネージャー 押尾 太一氏が語った。
photo
メタバースについて既存のWebサービスは何を検討すべきか
(Photo/Getty Images)

本記事は、Tencent Japan、36Kr Japan主催の2021年12月に開催されたオンラインイベント「日中メタバース最前線~ビジネスの観点から見る展望」の講演内容をまとめたものです。

利用者によって感じる価値基準は異なる

 モデレーターの三井物産 押尾 太一氏は、「オンラインゲームとメタバースの差別化」について問題意識を持っている。VRなどのテクノロジーとゲームの親和性は高く、バーチャル技術の多くがゲームによって実現されてきた。だからこそ、たとえばFortnite(フォートナイト)やRoblox(ロブロックス)などのオンラインゲームはメタバースの1つに定義されることがある。

画像
三井物産
トランスリージョナルマネージャー
押尾 太一氏(モデレーター)

 フォートナイトには、ゲームを楽しむだけでなく多くのプレイヤーがライブ接続するオンラインイベントなどの企画も存在する。また、ロブロックスは、ユーザー自身がゲームを作ったり、他のユーザーが作成したゲームをプレイしたりできる「UGC(User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ)」の要素が特徴的だ。

 まず、HIKKY 角田拓志氏は「ゲームであれメタバースであれ、マーケットの状況によって価値基準が変わる」と話した。すなわち、それを楽しむ「住人」、ユーザーによって感じる価値基準が違うということだ。

「主催者として感じるバーチャルマーケットの価値とは、現実とは異なる新しい人生をバーチャル内で体験できることだ。ヘビーユーザーになればなるほど、現実とはまったく異なる人生を楽しむ傾向がある」(角田氏)

 こうした提供価値は、必ずしも他と差別化されているわけではなく、重複している部分もある。角田氏は、メタ(旧フェイスブック)の価値は、SNSをベースにしているだけに「友だちなどの他のユーザーと一緒にいられること」を価値に据えているように見えると指摘する。さらに、「リアルでエキサイトな体験ができる」価値という点では、メタバースとは厳密には異なるが、Facebookの「360度写真」などの機能もある。

 また、フォートナイトは「ゲームで勝つという目的があり、そこでプレイヤー同士のコミュニケーションが生まれ、新しい価値となっている」(角田氏)。マーケットの状況によって、特定の提供価値が急激に拡大することがあり、そのときに、どういう価値がスケールしていくかは利用者次第だと指摘する。

 角田氏は「現状のSNSであればTwitterやFacebookなど複数のプラットフォームがあるが、ユーザーは複数のツールを目的に応じて使い分けている。いずれ、メタバースもそうなっていくのではないか」と、今後の展望を語った。

リアルとバーチャルのリンクには「マネー」の機能が重要

 角田氏の話を受けたMoguraの久保田 瞬氏は「メタバースの定義論はさておき、メタバースの技術的要素の多くがオンラインゲームで実現されてきた経緯を踏まえると、ゲームとメタバースは圧倒的に相性が良い」と分析する。その先端にいるのがフォートナイトやロブロックスであり、「そこに『あつまれ どうぶつの森』を加えたい」と久保田氏は話す。

photo
HIKKY
Chief Sales Officer
角田 拓志氏

 人がすでに集まっているプラットフォームだからこそ、他の領域への水平展開が容易である。MAU(月間アクティブユーザー)が1億人以上いれば、バーチャルイベントを行ったときに相当数が集まるからだ。「ゲームよりも後発のサービスでも、今後、VRとコミュニケーションが組み合わされたサービスが登場し、新たな価値が作られていくのではないか」と久保田氏は予測する。

 さらに「ゲームが作れる、オンラインイベントもできる、ウェビナーもできる、というように最初から複数の提供価値を備えたサービスも出てくるだろう。そうなると、これからジャンルが確立され、プラットフォームの類型も明確になっていくのではないか」と分析する。

photo
Mogura代表取締役
Mogura VR編集長
久保田 瞬氏

 その理由として「メタバースに取り組もうとしている企業のうち、実際サービスを提供しているところは一握りに過ぎない」点を挙げた。

 そのため、「地の利」があるのがゲームであり、FacebookやテンセントといったSNSをベースとしたプラットフォームだ。久保田氏は「FacebookやWeChatをベースに、コミュニケーションに特化したメタバースを水平展開しようとしている」と現状を指摘する。

 続いて、ジミー氏が「メタバースとゲームの差別化」について言及した。「個人的には経済を注視している。ゲームの中でのコインやアイテムの購入、それらの物価やデフレ、インフレ基調というのは、基本的にゲーム会社がコントロールしており、完全な経済としては成立していないからだ」という根拠を示す。

 そして、メタバースなどのバーチャル空間がリアル空間の1つとしてリンクするには「経済やマネーの部分が、重要なインフラ要素を担うだろう」という。ブロックチェーン技術を活用し、デジタルデータに資産的価値を付与する「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」がメタバースのマネーの機能を担うことが期待されている。

photo
テンセントジャパン
Cloud Head of Solutionアーキテクト
付昂(ジミー)氏

 ジミー氏は「フォートナイトをはじめ、ゲームで作られたアイテムなどの価値を現実のマネーに変換できるか、そこがゲームとメタバースの大きな差別化ポイントになるだろう」と話した。

【次ページ】現状のWebサービスを最適化する、それがメタバース
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます