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  • 2022/01/20 掲載

グーグル注目のスタートアップがコロナ禍のニューヨークを救う? IT都市化が加速へ

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米国最大の都市ニューヨーク。世界を代表する金融センターであるだけでなく、ファッションやグルメ、エンターテインメントの一大拠点でもある「眠らない街」だが、人々をもてなし、楽しませるという持ち味ゆえに、市経済はコロナ禍で大打撃を受け、米国の他都市に比べて雇用の回復が遅れている。こうした中、市内では復興に向けた取り組みが急ピッチで進行しており、その主役の一つに躍り出ているのが、グーグルを筆頭とする巨大IT企業だ。グーグルは市内のスモールビジネスへの直接支援に動くと同時に、「ニューヨーク・リカバリー・チャレンジ」と題したスタートアップ支援プログラムを実施。雇用の促進やマッチングなどの分野でインパクトが期待できるテック系スタートアップを支援し、ニューヨークの復興につなげようという、一石二鳥の企画に踏み出した。
執筆:奥瀬なおみ、編集:岡徳之

執筆:奥瀬なおみ、編集:岡徳之

奥瀬なおみ
中国語・英語翻訳者兼フリーライター
アジアの経済ビジネス情報を配信するNNAの中国本土・香港版編集長を経て、DZHフィナンシャルリサーチ中国株部門の前身、トランスリンクの創業時メンバー。現在は中国のマクロ経済や各業界に関するレポートの作成を手掛けるほか、中国株関連書籍の製作にも携わる。

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コロナからの回復が遅れるニューヨークでグーグルは市内のスモールビジネスへの直接支援に乗り出した
(Photo/Getty Images)

グーグルが「ニューヨーク・リカバリー・チャレンジ」実施

 この「チャレンジ」には市内の170社以上が応募したが、選ばれた10社の中で目立つのは、低所得層やギグワーカー、障がい者など、コロナ禍での弱者を対象としたビジネスモデルだ。

 最優秀賞を受賞したのは、黒人の個人事業者向けの銀行サービスプラットホームを目指す「Guava」(グアバ、マンハッタン本社)。10万ドルの賞金を獲得し、他の受賞者とともに、グーグルや法律、銀行などの専門家からアドバイスを受ける権利を手にした。

 変異種オミクロン株のまん延による混乱で、ニューヨーク経済の“正常化”がさらに遅れる可能性が高まる中、こうしたスタートアップの多様なソリューションは弱者コミュニティーの救済に一役買う見込み。

 同時に、巨大IT企業からスタートアップまで、市内のテック分野のエコシステムがコロナ禍で厚みを増し、復興に向けたエンジンの一つとなる可能性が高まっている。

 かつてはテクノロジー分野が弱点とされたニューヨーク経済だが、コロナを契機に「IT都市化」が加速しており、ハイテクセクターがコロナ後の経済・社会のダイナミズムを主導しそうだ。

 また、こうした状況がウォール街への富の集中という従来の構図を変え、所得格差、富の格差を多少なりとも変えるきっかけになるのか。この点もポストコロナに向けて注目されそうだ。

金融のリモート化で通勤客もまばら、雇用の“分断”進む

 黒人で元警官のエリック・アダムズ氏を新市長に迎えたばかりのニューヨーク市は、オミクロン株の爆発的な感染拡大にもかかわらず、明確にウィズコロナ戦略を掲げ、復興にかじを切っている。ただ、全米レベルで労働力不足に焦点が当たる中、ニューヨークでは雇用の回復ペースが相対的に鈍い。

 市の失業率はロックダウン後の2020年5月に20%まで上昇した後、経済活動の再開に伴い徐々に低下し、ブロードウェーが再開した後の2021年11月には9.0%。1年前の12.0%から3ポイント改善した。とはいえ、この数字は全米平均(11月に4.2%、12月に3.9%)の2倍以上だ。コロナ前の3.6%(20年1月)との比較でも依然、2倍強の水準にある。

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コロナ禍で明暗を分けたウォール街とブロードウェー
(Photo/Getty Images)

 『ニューヨーク・タイムズ』紙は12月半ば時点で、「他都市ではコロナで失った雇用の9割強を取り戻したが、ニューヨークでは6割弱に過ぎない」「パンデミックが始まってから、ニューヨークほど大きな打撃を受け、雇用の回復に悪戦苦闘している大都市は、国内には他にない」などと指摘している。

 観光客の減少だけでなく、通勤客の姿がまばらとなったことも、ニューヨークには痛手だ。

 平日のオフィス街を埋め尽くしていた郊外在住の通勤組は本格的にリモートワークに切り替え、マンハッタンには足を向けたがらない。経済団体パートナーシップ・フォー・ニューヨーク・シティの調査によれば、11月上旬の段階で、週5日出勤しているオフィスワーカーはわずか8%だったという。

 旅行者だけでなく地元の客足も鈍れば、街の活気が戻るはずもなく、特に低賃金のサービス業従事者への打撃は深刻だ。

 半面、ウォール街はコロナ禍で活況。JPモルガン・チェースなど有力金融グループの好決算や、リモートワーク中の高額所得者の存在が市の税収の下支えに寄与した。ただ、その結果、職種別に明暗が大きく分かれ、雇用や所得の“分断”がさらに進む形となった。

【次ページ】黒人ビジネス支援や「ニューロダイバーシティ」、スタートアップに多様性
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