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  • 2022/01/07 掲載

物流志す学生はなんと「0%」、人材不足が加速する物流の根本課題

連載:「日本の物流現場から」

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「物流業界への就職を志す学生は0%」──これは、学習院大学経営学科の学生にアンケートを取った結果で、先日行われた4大学合同ロジスティクス・SCM研究発表会において発表された。おそらく多くの学生は、物流業界に対する好き嫌い以前に、物流に無関心なのだ。課題は、小学生から大学生に至るまで物流を学ぶ機会がほとんど無いことにある。筆者を含めた物流従事者の大半が、社会人になってから物流を学んだ人だろう。物流危機が叫ばれる今だからこそ求められる、物流教育の必要性について考えよう。
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「物流を学びたい」と、物流企業にアプローチした女子高生だが、実際に学ぶまでにはいくつかの障壁を超えなければならなかった

大学生が激論、「日清食品のホワイト物流」を研究・発表

 2021年12月11日、日立物流本社内にある「LOGISTEED CAFE」(ロジスティードカフェ)にて、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が主催した、4大学合同ロジスティクス・SCM研究発表会が行われた。JILSでは大学生を主な対象に、物流やロジスティクスの意義、重要性を広めるための活動を行っているが、この研究発表会はその一環で実施されており、今年で4年目となる。

 今年は、日清食品から提示された課題「日清食品がホワイト物流をさらに進めるために─持続可能なサプライチェーンを目指して─」に対し、青山学院大学、学習院大学、専修大学、東京都市大学の学生が、8チームに分かれ、それぞれの研究成果を発表した。

 学生たちは事前に日清食品から状況説明を受けた上で、日清食品の社員1、2名がそれぞれの担当チームに助言、学生は在学する大学教授らの指導も受けて研究発表に臨んだ。

 「『最近の大学生をなめるなよ!』と、大学生の娘に諭されてこの場に参加しましたが...。まさにその言葉のとおり、皆さんの研究発表のレベルが高く、とても驚かされました」──発表終了後、このように総評したのは、日清食品 事業構造改革推進部 サプライチェーン企画部 部長 矢島純氏である。

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学生の前であいさつをする、日清食品 サプライチェーン企画部部長 矢島純氏

 参加した物流関係者らが驚かされる内容も多々あった、刺激的で充実した研究発表会となった。

大学生が指摘する物流業界の課題と解決策

 たとえば、青山学院大学の研究チームからは、「ホワイト物流を推進するためには、『日清食品さんとなら協力します』と言われるような荷主になるべく、物流事業者とのパートナーシップを強化するべきだ」という発表がされた。立場上、荷主が圧倒的に強いパワーバランスを持つ、現在の物流業界が抱える課題をきちんと研究したのだろう。

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青山学院大学の研究チームからは、荷主と物流事業者の関係について厳しい指摘が発表された

 専修大学の研究チームからは、「HUNGRY DEMAND SISYTEM(貪欲な需要予測システム)」なる提案が行われた。これは、日清食品が提供するカップヌードルのCMで使われたキャッチフレーズ「Hungry?」をもじったものであろう。

 SWOT分析を用いた分析結果から、メーカー、卸売業者、物流事業者、小売店らが協力して需要予測システムを運用し、ホワイト物流実現への道筋を描いたストーリーは見事であった。

 学習院大学の研究チームは、冒頭から「物流業界への就職を志す学生は0%」という、思わず筆者ものけぞってしまった刺激的な現状を示した。この上で、トラックドライバーの労働問題にフォーカスし、「日清食品が、新しい物流を発信すべき」として、「笑顔を運ぶ」をタイトルに発表を行った。「物ではなく、人を中心とした物流」という意見具申は、ホワイト物流の本質を捉えたものだ。

 私が最も気に入ったのは、東京都市大学の研究チームが行った「ホワイト物流に向けた次世代のサブスク」であった。カップ麺の売上における季節波動は、そのまま輸送波動につながる。波動の平準化を実現するため、他メーカーとアライアンスを組み、食品を定期購買するサブスクリプションサービスの提供について提案した。

 メーカーである日清食品にとっては、新たな販売機会を創出できる上、運送事業者にとっても、季節波動に一喜一憂することなく、安定した輸送事業を期待できるという、ビジネスの拡大とホワイト物流の双方実現を目指した発想が素晴らしい。

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会場では学生からの質問、もしくは他大学の先生方からの質問が飛び交い、熱い議論が繰り広げられた

 そうは言っても、限られた期間で学んだ学生の研究である。細かい点を見れば、ツッコミどころもあった。荷主・物流事業者・配送先の関係性を混同しているチームもあったし、解決策として提案されたソリューションについても、機能を誤解していたり、より適切なソリューションの存在を見落としていたケースもあった。

 だが、そういった枝葉にとらわれず、各チームの指摘する課題や解決策の幹をきちんと見れば、いずれのチームも現在の物流が抱える課題に対し、正鵠を射た指摘や考察を行っていた。

 彼ら彼女らが、本格的に物流を学んだ上で、物流業界に就職してくれたら、物流業界にはどんな化学反応が起きるのだろうか──私に限らず、イベントに参加、もしくはオンライン視聴した多くの方々が、若者たちの可能性に期待したことだろう。

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