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  • 2021/11/22 掲載

【ITR提言】なぜジョブ型雇用で「脱Excel」が必要か、人材管理のIT化で何が変わる?

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企業変革を行うには人材の適切な配置が重要だが、そのためには人材スキルの正確な把握が前提となる。アイ・ティ・アール(ITR)のリサーチ・フェローである平井 明夫 氏が、「カオナビ」「HRBrain」などに代表される人材管理(タレントマネジメント)システムの導入状況や人材管理の高度化を視野に入れた活用例について、同社での調査を元に分析、提言を行った。最近よく聞く「ジョブ型雇用」や「OKR」を可能にするIT活用とは何か。
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ジョブ型雇用の導入状況別の人材管理システムの導入状況(詳細は後述)

大企業の47%が人材管理システムを導入済み

 ITRでは、人材管理のIT化に関する動向調査を2021年5月に実施。売上高1億円以上かつ従業員数50名以上の国内企業の総務・人事部門、IT部門を対象にインターネット調査で324件の有効回答を得た。

 これによると人材管理システムの導入状況は全体で32%が導入済みと回答し、「導入が決定している」「検討中」を含めると約7割が導入に前向きであることが分かった。平井氏は、特徴的な点として「3000人以上の大企業では、47%がすでに人材管理システムが導入されている」ことを挙げた。

 この背景には「コロナ禍を受け、働き方が多様化するなどした結果、人材管理のためのIT投資額が大企業を中心に増加した」ことが挙げられるという。特に、3000人以上の企業では「大幅に増加」(16%)、「やや増加」(23%)など、4割近くの企業で人材管理のためのIT投資額が増加傾向にあると回答している。

 一方、500人以上3000人未満の企業では導入済み企業は28%にとどまっており、中堅・中小企業では人材管理システムの導入が大企業ほど進んでいない現状が浮き彫りになった。

成功企業は「より高度な管理」を求めてプロジェクトを継続

 では、人材管理のIT化について企業はどんな課題を持っているのか。人材管理システム導入を検討中の企業に聞いたところ(複数回答)、最も多かった回答が、「どんな人材管理テーマがIT化できるかが不明」(41%)という課題だった。

 平井氏は「人材管理システムは機能面も多岐にわたっており、どこから導入を始めるか、どういう優先順位で導入、運用したらよいか頭を悩ませている現状があるのではないか」と指摘した。ほか挙げられた課題には「人事担当者のITスキル不足」(35%)、「システム化に要する費用が高い」(34%)が続いている。

 また、導入済みの企業が人材管理システムの導入後、どんな課題があるかを見ることで、システム導入によって導入前の課題が解決したか、ある程度の傾向をつかむことができる。これによると「人事担当者のITスキル不足」という課題は、導入済み企業でも32%が課題に挙げており、導入、運用フェーズでも人事担当者のスキル不足の課題は依然として残っていると平井氏は述べた。これについては、マニュアルの整備や研修の実施など、多くの企業がこの課題解決に苦労している現状があるようだ。

 続いて人材管理システムの効果に関する調査結果を見てみよう。導入検討中の企業が期待する効果としては、「人材管理業務効率化」(73%)、「人材情報の見える化」(69%)、「人材の有効活用・人材配置の最適化」(68%)を挙げる企業が多い。

 一方、導入済み企業が挙げる人材管理システムの効果の項目を見ると、「人材の有効活用・人材配置の最適化」は55%と、導入前の企業が期待する効果が高いにもかかわらず、導入済み企業が効果として感じる傾向は他2項目と比較して低いことが分かった。

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「人材の有効活用・人材配置の最適化」は導入前後で効果に乖離がある

 また、導入済み企業が「次に期待する効果」として挙げるのが「人材育成計画の高度化」「離職防止・モチベーション向上」「採用ミスマッチの防止」といったポイントだ。

 平井氏は、当初期待した効果が得られた企業が、「第2フェーズとして育成計画の高度化をはじめとする、より高度な効果を期待する傾向が見られる」と説明した。

ジョブ型雇用の企業の多くが、人材管理システムを導入

 では、第2フェーズ以降の活用例にはどんなケースがあるのだろう。平井氏は、人材管理システムの高度化活用例として「ジョブ型雇用」「OKR(Objectives and Key Results)」「ポータブルスキル」の3つを挙げた。

 まずはジョブ型雇用である。これは企業が従業員に対して職務内容(ジョブ)を定義し、これに基づいて必要な人材を採用し労働時間ではなく成果で評価する雇用制度のことだ。平井氏は「ジョブ型雇用では、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)に基づいた評価、異動、採用が行われる」と説明した。ITRの調査結果を見ると、ジョブ型雇用を「全社的に導入」している企業は14%、「一部の部門や職種で導入」している企業は27%だった。

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ジョブ型雇用を導入済みの企業では、人材管理システムの導入割合が高かった

 職務記述書には、職務内容や責任、職務の範囲、求められるスキル・知識・資格などを具体的に記載しなければならないが、これらは部門、職種、職位ごとに異なるため、データベース化した上で随時更新していく必要がある。平井氏は「職務記述書の内容を随時更新していくためには、Excelなどのファイルで管理することには限界がある」と指摘する。

 実際、「全社または一部の部門でジョブ型雇用を導入している」企業のうち47%は、すでに人材管理システムを導入済みと回答している。「実際にジョブ型雇用を導入している企業は、人材管理システムもすでに導入済みである割合が高い傾向が示された」と平井氏は説明した。

【次ページ】OKRやポータブルスキルをどう運用すべきか?
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