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多くの企業が、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を阻む要因の1つに挙げる「DX人材の確保・抜擢」の問題。スタートアップやベンチャー企業に人材が集まると言われる中、老舗企業ではどのようにDX人材を確保しているのだろうか。2019年から構造改革を進めているパイオニアで、ビジネスモデルの変化を踏まえたIT/DX人材活用を進めている石戸 亮氏が、同社での取り組み内容を語った。
本記事は、ビズリーチ主催の2021年8月に開催されたオンラインイベント「創業70年以上のCDO最高デジタル責任者たちが語る、DX人材を活かす真の人事・組織戦略とは」の講演内容をまとめたものです。
新生パイオニアの成長戦略とは何か
創業者の松本 望氏が1937年に国内初のHi-Fiダイナミックスピーカーを開発し、翌年に前身となる「福音商会電機製作所」が設立されたことから歴史が始まったパイオニア。1961年に現在の社名に変更後、ステレオやレーザーディスクプレーヤー、プラズマテレビなど多くの製品を開発・提供してきた老舗企業だ。1990年代からは、カーオーディオやカーナビなどのカーエレクトロニクス市場で高いシェアを誇る。
ただ、スマートフォンの普及やアマゾン(Amazon)やグーグル(Google)などのテックジャイアントの参入などの変化を受け、厳しい状況に陥った時期もあったという。
同社は2019年、香港の投資ファンドの傘下となり、モビリティサービスとモビリティプロダクトを両軸とするカンパニー制へ組織を変革。CEO(最高経営責任者)を始め、CHRO(最高人事責任者)、CFO(最高財務責任者)、CTO(最高技術責任)、CMO(最高マーケティング責任者)やCDO(最高データ責任者)などを外部から招聘し、2025年に向けた新企業ビジョン「未来の移動体験を創ります」を掲げ、ソリューションサービス企業への変革に取り組んでいる。
2020年4月にパイオニア モビリティサービスカンパニーへ入社した石戸 亮氏は、2021年8月から、当初のCDO(最高デジタル責任者)という立場からCMO、CCO(最高顧客責任者)という役職に就いている。石戸氏は「DXを推進する特定の組織に属せず、有機的に動く役割を求められていた。現在は、事業の加速や事業部門の活性化を目指して、より顧客に向き合うことに注力している」と自身の立ち位置を説明する。
トライアングルで展開するパイオニアのデータ活用術
石戸氏は、所属するモビリティサービス カンパニーにおいてBtoBビジネスに軸足を置きながら活動している。モビリティ関連のさまざまなデータを活用し、サービス利用者の安全・安心の確保や業務効率化の実現などのソリューションを展開しているという。
現在は、同社のもう1つ主軸であるモビリティプロダクト事業がポートフォリオの多くを占めているが、2025年までに両事業をEBTDAで同等の割合にすることが中期経営計画に示されている。石戸氏は「新体制になって数年、同社の業績はコロナ禍ということもあり売上はややタイトではあるが、営業利益は改善してきている」と説明する。
モビリティデータを活用したソリューションとは、一体どんなものなのか? 石戸氏は「これまで蓄積してきた、さまざまなデータを活用できる点が自社の強みだ」と自負する。同社は2006年から通信型のカーナビやドライブレコーダーなどを通じて走行データの収集・分析を開始。現在では、約80億キロメートル相当のモビリティデータを蓄積し、さらに約1億4000万枚の画像・映像データ、約60万地点もの地図や位置情報データを保有しているという。
データ活用においては「社会的なニーズ」「パイオニアのアセット」「自社に足りないもの」のトライアングルをベースとして、既存ビジネスとは異なるサービスや、新しいデジタルサービスなどの創出に取り組んでいる。
石戸氏は「カスタマーサービスに注力する場合、通常、物を届ける顧客接点でのニーズや行動を軸に捉え、プロダクトやプライスを設定する。当社では、そのさらに前段階にある、これまでの製造業が創り上げてきたプロセスや文化も含め、現代のビジネススピードやマインドにそぐわないものを進化・変化させたり、外部のエッセンスを入れたりするなどで改革することを目指している」と自社の取り組みを紹介する。
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