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- 2021/10/06 掲載
「ポケモン GO」もメタバースに、VRメタバースとARメタバースのすみ分け進化
「メタバースはディストピア的」、ポケモン GO開発企業CEOの批判
仮想共有世界を意味する「メタバース」。最近海外メディアではバズワードとなり、関連記事が多く散見されるようになってきた。その論調の多くは、仮想世界における新たビジネス機会やイノベーションにつながる可能性が高まるとして、肯定的なものがほとんどだ。
しかし、メタバースに対して批判的な意見がないわけではない。
数年前に爆発的人気となったスマホARゲーム「ポケモン GO」の技術開発を担ったナイアンティックの創業者のジョン・ハンケCEOは、現在メディアで取り上げられているメタバース像は、人間を完全に仮想世界に閉じ込めるもので「ディストピアン(暗黒世界的)」だと批判。
一方で、現実世界をベースにしたメタバースは、人間のあるべき姿を実現するものであり、後者の方が望ましいとする主張を展開している。
ハンケ氏のこの主張は、メタバースの進化が大きく2つの方向で展開することを認識させてくれるものであり、メタバースの可能性を考える上で有益な視点と言えるだろう。
つまり、バーチャル・リアリティ(VR)技術をベースとするものと、オーグメンテッド・リアリティー(AR)技術をベースとするメタバースという2つの方向性のことだ。
現在メディアで取り上げられるのは、ほとんどの場合暗黙で前者のVRメタバースだ。一方、AR技術をベースとするメタバースも技術的には不可能ではない。
実際、ハンケ氏率いるナイアンティックも、ARメタバースの実現に向け新しいARテクノロジーの開発に乗り出している。
ARメタバース実現に向けた課題
ハンケ氏がディストピア的だと批判するVRメタバース。同氏は映画「レディ・プレイヤー1」に出てくるような仮想世界のことだと指摘する。この映画では、現実世界が荒廃した近未来、人々は仮想共有空間でしか楽しみを見いだせないディストピア的な状況が描写されている。
ハンケ氏は、このようなVRメタバースでの体験はすべて仮想空間上のものとなり、家族や友人とのつながりなど、人間が求めるものを得ることができないと語る。
一方、ARメタバースは現実世界を軸にしたものであり、メタバースの中でも人間らしい価値を体現できると主張する。
このARメタバースを実現するには、技術的に乗り越えるべき課題がいくつか存在する。
その中でもハンケ氏が主要課題として挙げているのが、ユーザー状態のシンクロナイゼーションと、現実世界へのユーザー/オブジェクトの正確な投影の2つだ。
ユーザー状態のシンクロナイゼーションに関して、ナイアンティックはNiantic Lightshipプラットフォームを通じて実現する構え。
同プラットフォームは、ゲーム開発エンジンUnityに統合できるデベロッパーキットで、もともとはポケモン GOでも使われていたプラットフォームだ。
【次ページ】現実世界をベースにするARメタバース
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