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  • 2021/03/16 掲載

仕事のミスはあなたのせいじゃない。失敗学の権威が語る、ミス直後に本当にすべきこと

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「メールの見落とし」「金額の打ち間違い」「スケジュールの勘違い」……そんな仕事上のミスをしてしまったとき、あなたはその後どうしていますか? 「なんでこんなミスをしてしまうのか」と自分を責め、「次からは気を付けよう」と気持ちを改めているようなら、きっとまたいずれ同じミスを起こしてしまうでしょう。NPO 失敗学会の副理事長・事務局長で『ミスしない大百科 仕事は速くてもミスがなくなる科学的な方法』(SBクリエイティブ 共著・宇都出 雅巳 氏)を執筆した飯野 謙次氏が、ミスした後に本当にやるべきこと、同じミスをしないようにする秘訣を語りました。
聞き手・構成:編集部 渡邉 聡一郎

聞き手・構成:編集部 渡邉 聡一郎

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東京大学
環境安全研究センター 特任研究員
飯野 謙次氏


ミスは「あなたのせいじゃない」?大事な心の持ち方とは

──本日は、職場でミスした際の考え方についてお聞きしたいと思います。ミスに気づいた直後、私たちはまずどういう行動を取るべきでしょうか。

飯野氏:最初にやるべきは、上司に何が起こったか説明して「なぜそうなったか」を自分なりの原因を話して「申し訳ない」と謝ることです。次に「問題をどう解決しよう」と思うのか、自分の考えを述べてください。

 多くの人が最初に謝罪してしまうのですが、これはあまり得策とはいえません。私も経験があるのですが、報告を受けている側はその瞬間にいろいろと嫌な想像をしてしまい、説明を受けるまで「宙ぶらりん」の状態になってしまいます。

──ミスをした後の不安や恐怖を和らげる心の持ち方はありますか。

飯野氏:「自分」と「自分の役職」を切り離して考えることです。「自分の人格がダメだ」と思ってしまうのではなく、「自分の役職がミスをした」と考えてください。

 その役職がミスをしたということは、どちらかといえば会社の責任なのです。どうして自分のような役職にいる人がそんなミスをする仕組みになっていたのか、と発想を変えてみましょう。そして、原因となってしまった全体の仕組みを変えようとすることです。そうすれば、改善の良いアイデアも浮かびやすいし、不安を感じずに済みます。

 あなたが上司の立場にいる場合、ミスをしてしまった部下への声がけもこうした観点からすると良いでしょう。ミスはあくまでビジネスの経過の1つです。それを説明したうえで、どう解決すればいいか本人に考えさせて、その解決方法で大丈夫か一緒に考えてください。ミスを犯した本人が「それをミスだ」としっかりと認識していれば、無駄な叱責は不要です。

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飯野氏は、「ミスはあくまでビジネスの経過の1つ」と強調する

──確かに「ミスと自分の人格とは紐づくものではない」と考えると、少し気が楽になるかもしれません。ミスに対しても客観的に対処できそうです。

飯野氏:はい。もっと究極的に言えば「たいていのミスで死にはしない」と考えることですね。日本社会を見ていると、武家社会の「失敗したら切腹」という精神を一部引きずっているような気がします。それはそれでまったくダメなことではないですが、もう少し気楽に生きた方が日々の生活はもっと楽しくなるはずです。

ミスをしない「仕組みづくり」に欠かせないもの

──ミスを起こさない仕組みが大事だということですが、往々にしてそれが実現できていないこともあります。その理由とは何でしょうか。

飯野氏:組織における上司と部下との典型的な例としては「申し訳ありませんでした!」「次から気をつけろよ」というやり取りがありますね。ミスの原因をいつの間にか「注意不足」のせいにしてしまっていることがわかります。これは、もしかしたら日本のカルチャーに由来する部分もあるかもしれません。

 私はしばらく米国で仕事をしていましたが、日本と比べて米国は仕組み化が徹底しているように感じました。たとえばチェックリスト1つをとっても、私が所属していたチームでは印鑑やチェックマークではなく、自分のイニシャルを書くようにしていました。本当に確信がないと、イニシャルはなかなか書けないものです。必然的にチェックも厳しくなりました。

 また、携帯電話の契約書などについては、日本では担当者に言われるがまま、あまり読まずに署名しがちではないでしょうか。一方、米国は当事者間では必ず契約書を締結する「契約社会」です。そのため、すべての内容にしっかり目を通す方が多い傾向があります。

──なるほど……。仕組み化を実際に進めていくにはどうすれば良いですか?

飯野氏:具体的な手法として覚えておくと良いのが
・チェックの仕方を変える
・やらなければならないことは、終えたらそれを進行管理表に記入し、それが終わっていないと次に進めないようにする
・常にグループ全員に進行状況を見えるようにしておく
・発想を転換して、問題となるうっかり忘れや、うっかり行動が物理的にできなくするにはどうすればいいか考える
などです。

 こうした仕組みの実現には、ITが強力な味方となります。たとえば、データベースと連携するアプリケーションを使えば、ミスのしようがありません。米国ではこういったITを活用した仕組化が一般的です。スケジュール忘れについても、リマインダーを設定してスマホに通知するようにしておけば、そう簡単に忘れることはありません。

【次ページ】ミスをした際、絶対にやってはいけない「NG行動」は?
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