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- 2020/06/09 掲載
【弁護士が解説】著作権とは?Webサイト運営で押さえておくべき基礎知識まとめ
著作権法とは?
そもそも、著作権法とは何でしょうか。著作権法の目的を見てみると、(著作物等の)「文化的所産の公正な利用に留意しつつ」(著作者等の)「権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」とされています(著作権法1条)。ここから分かるのは、著作権法は、文化の発展に寄与するという目的のため、「著作物等に関する権利者の保護」と「著作物等の利用者の保護」という2つの手段を取っているということです。
後でも説明しますが、法は「著作物」という定義に一定の条件を付す一方で引用などの著作物の利用にも条件を付すことで、権利者と利用者双方の保護を図っており、権利の独占と自由な利用とのバランスをとっているのです。そのバランス感覚こそが、著作権法を理解する近道となると言えるでしょう。
著作物とは?
前述の著作権法の目的から分かるとおり、著作権法は、保護対象が著作物(あるいはその派生物)であることを前提としています。そのため、著作権法を理解する出発点は、「著作物とは何か」という点にあります。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を言います(著作権法2条1項1号)。
まず、「思想又は感情」ではなくてはいけないため、単なる情報それ自体は保護の対象とはなりません。たとえば、「東京タワーは高さ333mである」といった記載は単なる情報を示すものにすぎませんから、「思想又は感情」に当たらず、著作物になり得ません。
次に、具体的な「表現」である必要があるため、頭の中に浮かんでいるだけの「アイデア」は保護の対象となりません。この点は特許法と大きく違うところです。
また、その表現は「創作的」である必要があるところ、「創作的」とは個性が発揮されていることを指すため、個性が発揮されていないありふれた表現も保護の対象とはなりません。たとえば、ネット記事の見出しのような短文は、内容の要約という趣旨からして選択肢が限られるため、ありふれた表現として創作性が認められないことが多いと思われます。
他方、写真や動画といったコンテンツは、被写体の選択、撮影場所・日時の選択、構図の決定など、個性を発揮する諸要素があるため、プロのカメラマンの写真・動画だけでなく、一般の方の撮影した写真・動画も創作性が認められることが多いと言えます。
このように、コンテンツがそもそも著作物として認められるためには一定の条件があり、すべてのコンテンツが著作権を発生させるわけではありません。逆に言えば、著作物ではないものを使用する場合は、少なくとも著作権法上は問題となりません。
したがって、他人のコンテンツを使用する場合には、まず、「このコンテンツは著作物なのか」という点から検討することが肝心です。
著作者・著作権者とは?
著作権法には、「著作者」と「著作権者」という2つの概念があります。両者の概念をきちんと理解しておかないと、たとえば、著作権の譲渡やライセンスを受けたいときなど、誰から譲渡・ライセンスを受ければ良いかわからず、結果として権利者に無断で著作物を使用してしまうといった事態にもなりかねません。このような事態を招かぬよう、両者の概念は区別して覚えましょう。まず、著作者とは、「著作物を創作する者」(著作権法第2条1項2号)を言います。つまり、原則として、具体的な表現を創作した人が著作者となるのです。例外として、会社が著作者になる場合(著作権法第15条1項)や、映画監督が著作者になる場合(著作権法第16条)が存在します。
次に、著作権者とは、著作権を保有する者を言います。通常は、著作者が著作権を保有するため、著作物の発生時点では、著作者と著作権者は同一のことが多いですが、著作権は譲渡可能なため(著作権法第61条1項)、著作権の流通等により著作者と著作権者が一致しなくなることが多々あります。
著作権が譲渡された場合、著作者は著作権を有していないため、著作物を利用する際に、著作者に対し著作物の利用対価を支払う必要はありません。他方で、著作者は、著作者人格権(著作権法第17条1項)という権利を有しており、著作物の内容を変更して利用するなどすると、著作者人格権の1つである同一性保持権(著作権法第20条1項)を侵害することとなり、損害賠償請求の対象となる場合があるため、注意が必要です。
「著作者」と「著作権者」という概念は、ビジネス上、必ずしもきちんと使い分けられておらず、「著作者」という表現で著作者と著作権者の双方を表す場面も、しばしば見られます。
著作権の譲渡・ライセンスをする際には、それぞれ把握するよう努めましょう。
【次ページ】著作物の自由利用の「私的複製」「引用」について詳細に解説
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