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- 2019/08/05 掲載
バーガーキングCMOは「失敗しても、しなくても怖い」からまずは行動する
実は迷走していたバーガーキングのマーケティング戦略
バーガーキングに着任する前、マチャド氏はユニリーバに在籍していた。ブラジル生まれでメキシコ、ロンドン、ニューヨークなどと拠点を変えながら、さまざまなカテゴリーの多種多様なブランドを担当して18年。まったく違うジャンルに挑戦したくなり、現在のバーガーキングを選んだという。入社した当時、同氏はバーガーキングを力のあるブランドだと思っていた。しかし、1954年創業と歴史もあり、世界規模第2位のハンバーガーチェーンでありながら、そのブランド価値を正しく訴求できていなかったと感じていた。今でも最大のマーケットである北米での活動が特にそうだったという。
同氏が入社する以前の4年間、バーガーキングのCMは広告業界で世界的に権威ある広告アワード「カンヌライオンズ」の銅賞を2つ取っただけに過ぎなかった。マチャド氏は、CMのサンプルとして、エアロスミスのスティーヴン・タイラー氏が当時の新製品のクリスピーチキンを宣伝するCMや、スーツを着た40代ビジネスマンが当時のメニューだったストロベリースムージーを食べるCMを挙げた。しかし、同氏はどちらも気に入らなかったという。
「バーガーキングはチキンやストロベリースムージーがセールスポイントのブランドではなく、CMそのものにリアリティがないからです。また、顧客とのタッチポイントとなるパッケージやポスターもうまくいっていませんでした」(マチャド氏)
その上で「ファーストフード業界は超がつくほど競争が激しい業界です。ロサンゼルスの地図上にチェーン店をマッピングするとそれだけで地図がいっぱいになります。ここにスターバックスを加えたら地図は緑色になるでしょう(笑)。我々の広告予算は北米第6位です。通常、人々の心は業界トップブランドにありがちです。もしブランドがトップの位置にはなく、常にマーケットシェアと戦っている状態なら、はっきりと差別化して、人々に注目されるクリアな活動を展開しなければなりません」と語る。
(1)ブランドを理解せよ
マチャド氏は「自分が扱うブランドがどんなブランドなのか。これを知らずしてどんな活動もできない」と主張する。顧客に「バーガーキングといえば?」と尋ねたところ、多くは「ワッパー(バーガーキングの看板商品)」と答えた。その理由として「ハンバーグが直火焼きで、焼き加減が毎回違う」「トマトがフレッシュで、サイズが大きくて、肉汁やトマトの水分などで服や手が汚れる」ことなどが挙がった。同氏はここから、ワッパーの“完全に不完全な”魅力を導き出し、この商品を愛する顧客のペルソナを作り出した。また、もう1つ見出した差別化ポイントとなったのが、ノベルティのペーパークラウンだった。大人も子供もバーガーキングの顧客は、このペーパークラウンをかぶって遊ぶのを楽しんでいたという。
(2)簡潔なメッセージを作成せよ
ブランドを知ったら、それを表す明確で簡潔なメッセージを作成する。短ければ短いほどいい。20ページものの報告書など誰も読まないからだ。簡潔なメッセージを作るのはたやすいことではない。しかし、何かを選択するために、何かを犠牲にするというプロセスが重要なのだという。いったんメッセージが完成すれば、いつでもそこに立ち戻ることができるという。
マチャド氏は、最も成功したキャンペーンとして、モバイルアプリを1年かけて開発・リリースしたときのことを紹介した。
モバイルアプリというアイデア自体は新しいものではない。しかし、アプリをダウンロードし、店舗から600フィート(約182メートル)以内に入って注文をアクティベートすれば、1セントでワッパーを提供するというキャンペーンの奇抜さが受けた。その結果、メディアが14万ダウンロードと報道するほどのダウンロード数を記録した。
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