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- 2018/09/12 掲載
遺伝子組み換え作物と除草剤、「実はセット」という深い闇
バイエルとモンサントのビジネスモデルとは
モンサントは今年6月、ドイツの医薬・農薬大手バイエルに買収され完全子会社となったばかり。今後、同様の訴訟が起こる可能性が高まってきたことからバイエルの株価は大きく値下がりした。
実はバイエルとモンサントは、種子と除草剤のメーカーとして知られており、世界の食卓に絶大な影響力を持っている。今回の裁判をきっかけに、両社のビジネスのあり方について市場の注目が集まるのはほぼ確実である。
今回の訴訟が意味していること
今回の訴訟で焦点となったのが、モンサントの除草剤「ラウンドアップ」である。同社を訴えた原告は、グラウンドの整備を行うグラウンドキーパーという仕事をしていたが、担当していた学校の校庭管理にラウンドアップに関連した製品が使用されていたという。今回の裁判では、がんとの関連性が争点となったが、モンサントは上訴するとしており、病気との因果関係について完全な結論が得られているわけではない。だが、今回の判決は非常に重要な意味を持っている。
モンサントとバイエルは除草剤の2大メーカーだが、実は除草剤と遺伝子組み換え作物には密接な関係がある。今回の合併によって、両社は除草剤と遺伝子組み換え作物の両方を提供する巨大メーカーとなる。
除草剤の有毒性に関する懸念は以前から指摘されていたが、因果関係を立証できず、公判には至っていなかった。今回、モンサントが敗訴する評決が出たことで、今後、類似の訴訟が多発する可能性が出てくるが、そうなってくると、除草剤と遺伝子組み換え作物をセットにした独特のビジネスモデルについても広く世の中に知れ渡ることになる。
今回の訴訟を受けてバイエルの株価が大きく下がったのは、単に訴訟リスクが増えたというだけの理由ではなく、種子と除草剤をセットにした独特のビジネスモデルにひびが入る可能性を市場が敏感に嗅ぎ取ったからである。では種子と除草剤をセットにした、独特のビジネスモデルとはどのような仕組みになっているのだろうか。
農業と除草剤は切っても切れない関係
モンサントはもともと人工甘味料のメーカーとして創業し、その後、除草剤の分野に進出。同社の製品はベトナム戦争で使用された枯れ葉剤の原料となった。これらのノウハウをもとに開発されたのが除草剤「ラウンドアップ」と業務用バージョン「レンジャープロ」であり、これらは農業分野における大ヒット商品となった。その後、同社は種子の分野にも進出し、最近では多くの遺伝子組み換え種子を販売している。一方、バイエルは消炎鎮痛剤として有名なアスピリンを開発した医薬品メーカーだが、その後、総合化学メーカーへと業容を拡大し、近年は農薬や種子の分野に特に力を入れている。
農業と除草剤は切っても切れない関係にある。
農業の現場は、常に雑草や病気との戦いになる。近年は健康に対する関心が高まっていることから、無農薬や有機栽培に焦点があたっているが、農作物の大量栽培を行う場合、これらの製法ではコスト的に無理がある。無農薬をうたっていても、実際には農薬に分類されない化学物質を除草剤代わりに使っている農家も多いといわれる。
人の口に入るものなので、こうした化学物質とは無縁であることが望ましいが、きれいごとばかり言っていては農業が成り立たないというのも事実なのだ。
【次ページ】除草剤と種子を「セットにする」というビジネス上の大発明
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