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  • 2018/08/06 掲載

MAを知り尽くしたマルケトが、なぜインサイドセールスを重要視するのか

連載:「売る仕組み」を作るインサイドセールス活用術

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インサイドセールスというと、一般的に「アポ取り」や「営業サポート」というイメージが強い。だが、インサイドセールス発祥の地である米国などでは、インサイドセールスは専門職としてキャリアパスが確立されており、その役割やミッションがしっかりと定義されている。そして、その定義に基づいて考えると、インサイドセールスは実は日本企業の商習慣や文化と非常に親和性が高く、大きな効果が期待できるのだ。今回はそんなインサイドセールスの役割とミッションについて、発祥から現在までの経緯、そして海外と日本の対比を踏まえてその有用性を説明する。
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MAのトップベンダーだからこそわかる、人間がサポートするインサイドセールスの価値とは

2つのチームに分かれるマルケトのインサイドセールス

山田氏:まず、マルケトがどんな会社かを紹介していただけますか。

小関氏:マルケトは、あらゆる規模、業種の企業に向けて、デジタルからアナログまで、適切なタイミングで適切なメッセージをそれぞれに合ったチャネルを通して届けるマーケティングオートメーション(MA)製品を提供する会社です。本拠地は米国で、現在、世界39カ国、6000社以上のお客さまがいます。日本でも、2014年6月の営業開始以来、富士通、KDDI、富士フイルムを始めとする多くの企業のマーケターが私たちの製品を利用しています。

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マルケト
バイスプレジデント マーケティング本部長
小関 貴志氏

1994年中央大学経済学部卒業、NEC入社。システム営業に従事。その後デル、セールスフォース・ドットコムでインサイドセールス、セールス、オンラインマーケティング、営業教育部門のマネジメントを歴任。2014年6月、マルケト日本法人の立ち上げ時よりバイスプレジデントとして参画し、2016年11月より現職

山田氏:成長を続ける日本法人の中でのインサイドセールスチームの役割は、どんなものでしょうか。

小関氏:チームのミッションをシンプルに言うと、パイプラインを営業チームへ供給することです。そのために外勤営業にお客さまの情報とアポイントを提供します。インサイドセールスの前段階を受け持つのがマーケティングで、通常は名刺などのリードが一定基準に達したタイミングでインサイドセールスがアプローチします。後ろの営業に渡す判断では、マルケトのソリューションとお客さまのマッチ度を示す「属性」と、Webサイトのページ閲覧、メールの開封、イベントへの参加などの興味度を示す「行動」の2つの要素を考慮します。

 具体的には、インサイドセールスは、マルケトに関心を持ったきっかけを尋ねることから対話を始めます。MAが流行しているから関心を持っている場合、課題に対する情報収集をしている場合、明確な目的がありMAを使いたい場合とお客さまの状況はさまざまなので、マルケトの話を聞いてみようという段階で、営業に渡すための情報を集めます。

山田氏:現在のインサイドセールスチームの体制と人数はどうでしょうか。

小関氏:現在は10人程度の体制で、2つのチームに分かれています。1つはわれわれが「ネームドアカウント」と呼ぶ注力企業だけを担当するBDR(Business Development Representative)チームです。年初に営業とマーケティングが継続的にアプローチしたい企業をノミネートしており、営業とペアになり、アカウントプランを見ながらアプローチする部署やシナリオを決めます。

 もう1つがその他すべてを担当するSDR(Sales Development Representative)になります。将来は、SDRの担当領域を規模や業種で分ける可能性もありますが、今は細分化していません。マーケティングから来たリードの育成に専念していて、コールドコールはやりません。

山田氏:SDRとBDRに分かれたのはいつですか。

小関氏:インサイドセールス自体は当初からありましたが、BDRができたのはお客さまが増えた去年の後半になります。企業の成長期には細分化のフェーズを迎えます。まず、営業をBtoBとBtoCで担当を分けました。インサイドセールスも待っているだけではなく、ターゲットを細分化してアプローチしようとなり、BDRができました。インサイドセールス一人あたりの担当社数は少なくなりますが、その分深くアプローチできるようにしたのです。

日本法人設立当初から視野に入れていたインサイドセールス

山田氏:インサイドセールスの体制はいつからありますか。

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マーケットワン・ジャパン
マーケットワン・ジャパン代表 アジア・パシフィック地域 統括責任者
山田 理英子氏

ボストン大学大学院卒業。2003年にMarketOne Internationalに入社。2006年に同社のアジア・パシフィック地域で初の拠点となるマーケットワン・ジャパンを設立。2016年からMarketOne Internationalのボードメンバーに就任。現在は日本法人の代表を務めながらグローバル拠点拡大に従事し、APAC(アジア太平洋)の他国拠点の立ち上げにも参画

小関氏:2014年6月のマルケト日本法人の設立後、三人目の社員がインサイドセールスの専任者でした。8月ぐらいには入社していたと思います。元々は外勤営業でインサイドセールスの経験者ではありませんでしたが、その時点の組織は、元々営業ができる人を必要としていました。二人目の社員である私がインサイドセールスのことを教えることができたこともあります。

 現在の採用でもインサイドセールスの経験を重視していません。経験者が少なく、ソリューションセールスができるスキルがむしろ重要だからです。お客さまの課題を見つけ、その課題を気付いてもらい、前向きに営業と会おうという気持ちを作るまでの役割を担うのですから、質問だけをしていてはダメですし、必ずしも流暢に話せる必要もありません。

山田氏:創業の段階でインサイドセールスを作ろうとしたのはなぜですか。

小関氏:営業とマーケティングの役割が変わったからです。10年前は、営業が主導権を握り、ツールもSFAが主役でした。しかし、顧客の動きが変わり、自分たちでいろいろ比較ができるようになると、営業が声をかけた時にはほぼ心が決まっていることも少なくありません。営業を増やすことよりも、むしろ今後のことを考えてMAがサポートするマーケティングとインサイドセールスの領域を固めておく必要があると思ったのです。

MAを導入しても、マーケティングと営業の分断が埋まるわけではない

山田氏:最先端のテクノロジー企業が、インサイドセールスの重要性に最初から気付いていたわけですね。

小関氏:マルケトが企業として目指す姿は「ハッピーカスタマー」を増やすことです。そのゴールに到達するには、マーケティングから営業までのプロセスを分断させないことが重要になります。MAを導入しても、分断が埋まるわけではないということです。

山田氏:MAを導入した企業はお客さまの行動を見ることはできますが、買う側の視点で見ると、勝手に見ている状況とも言えるわけで、その段階ではまだ対話は成立していません。インサイドセールスの役割は対話のきっかけを作ることで、その対話では営業が行う商談の対話とは質の違うものを求められます。

小関氏:テクノロジーだけで関係構築ができれば美しいのですが、今は人間がサポートする価値が大きいと思います。

山田氏:昔はデジタルでの行動を見られなかったわけで、そのこと自体は大きな変化です。

 では、これからインサイドセールスチームを立ち上げる企業は、どう進めていけばいいのでしょうか。

小関氏:一人でもいいので専任者を任命することと、役割を明確にすることです。欲張ってあれもこれもやってもらおうとするのではなく、やらないことを明確にする必要があります。マルケトの場合はお客さまの課題ヒアリングと、次のステップのアポイント設定まで、外にいかない、受注に向けた提案もしないとやらないことを決めました。もし、うまくいかないとしたら役割が多すぎるのかもしれません。

山田氏:とても重要な指摘です。インサイドセールスは営業のアシスタントになりやすいのです。営業がやりたくないことを丸投げされるようでは、中途半端になってしまいます。

小関氏:役割が明確になっていれば、ほかをアウトソースすることもできるのです。

【次ページ】 営業よりもむしろインサイドセールスに重要なスキルは?
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