連載:「売る仕組み」を作るインサイドセールス活用術
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近年、企業を取り巻く環境の変化から、特にBtoBマーケティングに求められる役割は大きく変化した。「マーケティングオートメーション(MA)」が登場したのも、そうした背景を受けたものだ。しかし、導入したが「思ったほど効果が出ない」という声も多く聞く。そこで今回の記事では、マーケティングオートメーションが持つ機能と役割を改めて理解し、マーケティングオートメーション”だけ”では何が足りないのか、有効活用するためには何が必要なのか、そのポイントを紹介する。
BtoB業界でマーケティングが注目される理由
ここ数年、BtoB業界でマーケティング強化に取り組む企業が増えている。2010年代以降で「BtoBマーケティング」という言葉がどれだけ検索されているのか、Google Trendsで調べたところ、図のようになった。BtoBマーケティングに関心のある企業は古くからあったが、全体として関心度が上がってきたのは、2015年以降といえるようだ。
BtoB業界でマーケティングが注目されるようになった理由はいろいろあるが、その1つとして、マーケティングオートメーションツールの興隆が関連しているのではないかと思われる。実際、
MarketsandMarketsの調査によれば、2014年に326億円であったマーケティングオートメーションの国内市場規模は、2019年には、490億円(予想)と5年で50%の成長が見込まれている。このマーケティングオートメーションの急速な普及がBtoBのマーケティングに注目が集まる1つの大きな契機となったことは間違いないだろう。
なぜマーケティングオートメーションに期待が集まるのか
ではなぜマーケティングオートメーションが急激に注目されるようになったのか、その背景について簡単に説明しよう。
2000年代以降に入り、企業を取り巻くデジタル環境が大きく変化した。これにより、何か新しいサービスや製品を導入する際の情報収集活動でも、デジタルチャネルが大きな役割を占めるようになった。
展示会やイベント、セミナーへ参加するよりも、「まずWebで検索して調べよう」と、ファーストコンタクトにデジタルチャネルを選ぶ企業も増えている。併せて、Web上でサービスの購買から、実際のサービスの仕様まで完結してしまうクラウドサービスの普及も、購買行動におけるWebでの情報収集、検討が顧客企業サイドで進む要因となっている。
これまでは引き合いによって案件初期段階の見込み顧客との接点を創出することができたが、近年では顧客自身が購買意思決定の後期まで、Webなどで独自に情報収集を行い、それを基に購買意志を固めることも珍しくない。
顧客サイドから見れば、Webで必要な情報を取得できるので、情報取得目的でベンダー企業に自ら問い合わせを行う必要がない。そのため、ベンダーからみれば「引き合い」が少なくなってきているわけだ。このため、ベンダー企業自身が引き合い依存を脱却しないことには、新規案件を獲得しにくくなったという背景がある。
そのため、マーケティングの役割として、認知を上げて興味を持たせるだけでなく、顧客が製品導入を検討し、決断するまでの過程を全面的にサポートすることが求められるようになった。旧来であれば営業チームが対面で提供していた情報も、顧客のニーズ状況に合わせてマーケティングのフェーズで提示することによって、より購買の可能性の高いリード(見込み顧客)を発掘する。これと合わせ、引き合いを待つのではなく、案件成熟度に応じてこちらから見込み顧客にアプローチをしていくことも求められる。
さらに、商談機会の逸失を防ぎ、営業機会を創出することもマーケティングの役割となった。ここから、マーケティングはコストセンターではなく、売上に貢献するプロフィットセンターとして期待されるようになり、マーケティングに対する投資対効果を求められるようになった。
こうした新しいマーケティングの役割を果たすにあたり、マーケティングオートメーションに対する興味が高まったと言える。
マーケティングオートメーションとは何か、またその課題とは
マーケティングオートメーションは、これまで集めたリードを活用し、商談案件へと育てていくプロセスを支援するツールだ。対象となるリードのデジタル行動を基に、購買フェーズのどの過程にいるのかを見極め、その人に合ったコンテンツを配信して、ニーズが成熟するまでの過程をフォローする。
マーケティングオートメーションでは、ニーズの成熟度や、商品・サービスに対する理解度によってターゲットをセグメントし、あらかじめ設定したシナリオに沿ってコンテンツを出し分ける。こうして顧客育成(ナーチャリング)を続け、機が熟したと判断できたら、確度の高い見込み顧客として、リード情報を営業部門に渡すことを目的とするツールである。
人間の営業担当者では把握しきれないデジタル行動を補足し、どんなコンテンツにいつ反応し、どのコンテンツを閲覧したのかを把握することで、まだ途上にあるニーズの萌芽を捉えることができる。すぐに営業活動を展開しなくても、メールなどのデジタルチャネルでつながりを保ち、時間をかけて案件になるまで「育てる」ことができる。
マーケティングが掘り起こしたリードも、マーケティングオートメーションを通じて見込み確度を上げることで、営業成績や売上の向上が期待できる。売る仕組みを支援するプラットフォームとして、マーケティングオートメーションは期待されており、実際そういった効果を求めて導入に踏み切った企業がほとんどだろう。
ただその一方で、「どうしたらマーケティングオートメーションの効果が出るのかわからない」という声も聞かれるようになった。
悩みの中でよく聞かれるものは、「思ったほど、確度の高いリードの件数が伸びない」「上がってくるリードの質に不満がある」といった声だ。
実はこうした悩みは、マーケティングオートメーション“だけ”に依存していると起こりやすい。
【次ページ】 マーケティングオートメーションの「不得意」なことは? なぜ海外には成功事例が多く、日本には少ないのか?
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