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- 2018/06/15 掲載
「次世代リチウムイオン電池」戦争勃発、4候補のどれが有力なのか
EV、スマートフォン、ドローンで需要増
現在の主流、リチウムイオン電池の課題
テスラがいよいよモデル3のデリバリーを開始し、2018年には全世界で本格的なEVの普及が始まり、EV元年になると予測されている。しかしここでネックとなるのがバッテリーのチャージ問題だ。テスラは現在全世界に1261か所のスーパーチャージステーションを持ち(2018年6月12日現在)、スーパーチャージャーの数は10021(2018年6月12日現在)。テスラでは今年から来年にかけ、この数を数千単位で増やすとしている。しかし、スーパーチャージャーステーションでもフル充電には最低でも1時間はかかるという問題は解決されていない。
それとはまた別に、現在最も普及しているリチウムイオン電池そのものにも課題がある。充電時間の他にも本体が過熱する、電池としての寿命が長いとはいえないといった課題だ。さらに、EVが普及したとしても、現在自動車メーカーが出しているバッテリー保証は5年10万キロ程度が一般的で、それを過ぎると、数十万円を支払いバッテリーを交換する必要が生じる。また、バッテリー自体の体積と重量がEVにとって大きな負担にもなっている。
こうしたことを鑑みると、次世代バッテリーに求められるのは充電時間が短縮されること、加熱などのリスクが軽減されること、寿命が長くなること、軽量小型であることが中心だとわかる。もちろんバッテリー製造コストがリチウムイオン電池を上回らないことも大切な要素だ。これをカバーできる次世代バッテリーは実現できるのか。
次世代バッテリーの候補1:ソリッド・ステート・リチウムイオン電池
まず、次世代バッテリーの候補として有力視されているものを見ていこう。最有力と目されるのは現在のリチウムイオン電池の進化版であるソリッド・ステート・リチウムイオン電池だ。この分野ではトヨタ自動車の研究部門と東工大のチームが一歩リードしており、2016年の時点で米ネイチャー・エナジー誌に論文を発表している。
論文によると、この技術により7分間でチャージできる上、低温や高温状態でも性能が落ちないバッテリーが実現できるという。この技術は特にEVやハイブリッド車にとって有用なものになると期待されている。
次世代バッテリーの候補2:ソディウム・イオン電池
同じく日本がリードしている技術としてはソディウム・イオン電池(ナトリウム・イオン二次電池)がある。レアメタルであるリチウムの代わりに安価なナトリウムを使用することで電池の価格が大幅に下落するため、EVの他、太陽熱発電の蓄電用などにも流用できる可能性がある。2015年にはフランス国立化学センターがPC用バッテリーの市販用プロトタイプの開発に成功しており、今後5~10年で実用化が急速に進むと考えられているバッテリーの1つだ。【次ページ】次世代バッテリーの覇権を握るのはどの企業か?
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