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- 2018/05/30 掲載
IoTによる「都市型農業」が本格化、高級住宅地ではゴルフ場の代わりに農地を作る
生産革新を支えるのは「データ」
2016年から農業従事者が増加のワケ
米国の職業別人口推移を見ると、1900年には農業が1200万人と最多だった。同年の製造業は600万人。その後1920年には製造業が農業を抜き、2000年まではトップを占めていたが現在では小売、ヘルスケアが1、2位となって3位。一方の農業は、2000年にはわずか250万人まで減少した。ところが農業従事人口は2016年ごろから微増の傾向にある。その増加分の多くが都市型、また20代や30代の若い層で占められており、新たな産業としてシリコンバレーのベンチャー投資家の注目を集める存在となっている。
ロサンゼルスに本拠を置く、都市型のマイクロ菜園の設置業者であるファームスケープ(farmscape)社によると、同社のビジネス規模は2017年の1年間で倍増。企業が集まるビジネスパークの一角、野球やサッカーのスタジアム内、さらには郊外型の集合住宅の敷地など、ちょっとしたスペースを利用した農業の導入が現在盛んに進んでいるという。
都市型農業と切っても切り離せない「IoT」
今年に入り、ロサンゼルス郊外で大規模な開発を進める住宅デベロッパーが「ゴルフ場の代わりに農地を囲む住宅を作る」と発表して話題となった。米国ではゴルフ場を含めた住宅地というのが一つのトレンドでもあった。マスターズが行われることで有名なペブルビーチがその典型で、高級ゴルフクラブを眺める住宅、というのはステータスシンボルでもあったのだが、都市型農業がその伝統まで変えつつある。
そして、こうした都市型農業と切っても切り離せない関係にあると言っても過言ではないのが「IoT」の存在だ。比較的気候の良いカリフォルニアでは都市型農業も屋外で行われることが多いが、ニューヨークのような都市になるとインドアの比率がぐっと高まる。
室内の温度、水分、光源などのコントロールを遠隔で行えるIoTが農業の効率を高めることになる。
現代の農業が抱える3つの課題
世界の食糧問題を考えるNPO「Malnutrition」によると世界の食糧需要は2030年には現在から35%増加する。これを補うためには「食料品のロスを防ぐ」などの努力が77%、「農業効率を高める」が14%、「農地を増やす」が9%、となっている。
こうした課題に応えるため、スマート・アグリカルチャーと呼ばれる、IoTなどのテクノロジーを利用した農業が望まれている。
現在の農業が抱える問題について、Agrotechnomarket社では以下のような点を指摘する。
「水不足」「コストマネジメント」「利用可能な土地の制限」。水不足は特にカリフォルニア州で顕著だが、実はカリフォルニア州は農業規模でも全米で1位。米人口の8%が集中する同州では野菜類を中心に都市近郊型農業が盛んである上、果物などは日本への輸出も多い。
コストマネジメントはどの農家も抱える問題で、人手がかかる産業だけに農業で利益を生み出すのは難しい。従来型の農業が高齢化しているのも、こうした農業のあり方が若い世代に避けられているためだ。
そして土地の問題。世界の人口は2050年には現在の70%増になるとの予測もあり、住宅需要が増え農地はますます狭まる。そのため少ないスペースを利用する都市型農業やインドア農業は今後脚光を浴びることになりそうだ。
【次ページ】郊外大規模農業にも大きな変化
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