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- 2016/12/02 掲載
メーカーは「データドリブン」な製造プロセスを確立せよ
#3DEXPERIENCE
アジャイル・マニュファクチャリングとは
近年、ソフトウェアのシステム開発では一般的な開発技法となったアジャイル開発。これはイテレーション(反復)と呼ばれる短期間の開発サイクルを採用し、迅速な製品リリースとリスクの最小化を実現する開発手法である。アジャイル開発が誕生した背景の1つには、技術の進化と顧客ニーズの変化が存在する。あらかじめ各工程を細かく分けておき、要件を確定させたうえで開発を進める従来の「ウォーターフォール型」では、目まぐるしく変化する顧客のニーズに対応しにくいためだ。
実は、こうした課題を抱えているのは製造業も同じである。こうした中で、製造業界で注目されているのが「アジャイル・マニュファクチャリング」だ。これは、製造業における俊敏性を重視した、開発・製造の概念/手法である。
ソフトウエア開発と同様、急速に変化する市場や顧客ニーズに対応するために生まれたこの手法は、複数の企業によるオープンなコラボレーションを積極的に取り入れ、エンジニアリング部門と製造現場を連携させて、短期間で製品を開発・製造する。市場に製品をいち早く投入したい企業にとって、今後は必須のアプローチになるといわれている。
このアジャイル・マニュファクチャリングの実現に注力しているのが、仏ダッソー・システムズだ。11月3日と4日に中国・上海で開催したイベント「Manufacturing In The Age of Experience」において、同社はアジャイル・マニュファクチャリングに関するセッションを実施した。
スピーカーとして登壇したのは、仏ダッソー・システムズと共同でアジャイル・マニュファクチャリング・ソリューションの概念実証を発表した、アクセンチュアの製造・流通本部インダストリアルグループアジア・パシフィック統括マネジング・ディレクターの河野真一郎 氏である。
冒頭で河野氏は「IT技術は、かつてないほどの規模と速さで進化しており、人々のライフスタイルを劇的に変えている」と指摘する。
その好例が、CPUの性能向上だ。1965年、米インテルの創業者の一人であるゴードン・ムーア氏は、「半導体の集積率は18か月で2倍になる」と論文で発表した。
しかし、実際はムーア氏の指摘以上のスピードで進化している。1971年から2015年の約45年間で、CPUの性能比は約3700倍、消費電力は7万7000分の1、価格は6万2500分の1になっている。河野氏は、「この性能向上のスピードを自動車に当てはめると、2015年の自動車の価格は(1971年を基準とすれば)4ドルだ」と語る。
IoTデータをリアルタイムで共有する
これまで製造業は、ITの進化と比べてデジタル化が遅れている業界だといわれていた。河野氏は、製造業の企業が取り組むべき項目として「増加した製品の種類とそれに伴う製造プロセスの複雑の解消」「開発/生産にかかるリードタイムの短縮」「製造ライン稼働率と処理能力の最大化」「生産品質の標準化」「生産オペレーションの可視化」を挙げる。実際、アクセンチュアが5~500億ドル規模の製造系企業のCクラス(チーフ)450人を対象に行った調査によると、75%の企業が「製造プロセスの柔軟性を確保するうえでの課題を抱えている」と回答したという。
河野氏は「デジタル改革をしても、そのプロセスが重要であることには変わりない。それは、例えばAI(人工知能)を搭載した製造ロボットが生産ラインに加わったとしても、それは『技術の革新』であり製造プロセスの柔軟性を実現したとはいえない。大切なのはデータドリブン(駆動型)の製造プロセスの確立だ」と指摘する。
データ駆動型の製造プロセスを実現し、アジャイル・マニュファクチャリングを成功させるための重要なファクターの1つが、IoT(Internet of Things)である。例えば、フィールドエンジニアの装備だ。現在は、GPS搭載レシーバや音声入力デバイス、さらにリアルタイムのコンディション・チェックモニターなどを装着しているケースもある。こうしたIoTやセンサーデバイスから収集されたデータの分析結果を、リアルタイムでエンジニアリング部門や製造現場で共有すれば、効率的な生産が可能になるというわけだ。
【次ページ】成功のカギを握る3Dプリンタの技術
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