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  • 2016/03/18 掲載

上場企業の役員報酬はどう決まるのか?どう決めれば業績を伸ばせるか

米国18億、英国7億、日本7,000万円…

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米国企業の役員報酬の総額は18億1718万、英国企業では7億2,053万円にのぼる。これに対して日本企業では6,965万円と米英と大きな差が付いている。一方、米英独仏では上場企業の100%が報酬委員会を設置し、その中で役員の報酬が決まるというスキームになっているが、日本では一部上場企業の28%しか報酬委員会を設けていない。企業の役員報酬は、どのような過程を経てどう決定されるべきなのか。デロイト トーマツ コンサルティング パートナーの村中靖氏は、2015年6月に適用が開始された「コーポレートガバナンス・コード」を踏まえた、日本企業における役員報酬制度のあるべき姿を提示した。
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コーポレートガバナンス・コードには役員報酬についての言及もある

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デロイト トーマツ コンサルティング
パートナー
村中 靖 氏
 金融庁と東京証券取引所がまとめた「コーポレートガバナンス・コード」は、“実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの”で、全73の自律的な対応を求める原則から成り立っている。「デロイト トーマツ ビジネスセミナー2016」で登壇した村中氏は、このコーポレートガバナンス・コードには、大きく3つの特徴があると説明する。

「1つめが、法的拘束力のない“ソフトロー”と呼ばれる位置付けの原則で、企業に自律的な対応を求めるものだ。2つめが“プリンシプルベース”で、用語の定義がなく、コードの趣旨を踏まえた上で、各企業が対応を考えるものとなる。そして3つめが“Comply or Explain”で、このコーポレートガバナンス・コードに準拠するか、準拠しないのなら、その理由を説明するかのいずれかを選択する項目となる」

 コーポレートガバナンス・コードのうち、役員報酬制度に関する項目は、以下5つの原則および補充原則だ。

【原則3-1.情報開示の充実】
(略)
(ⅲ)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
(ⅳ)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たって の方針と手続
(ⅴ)取締役会が上記(ⅳ)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の 指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明

【原則4-2.取締役会の役割・責務(2)】
(略)
 また、経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、 健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである。

【補充原則 4-2①】
経営陣の報酬は、持続的な成長に向けた健全なインセンティブの一つとして 機能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。

【補充原則 4-3① 】
取締役会は、経営陣幹部の選任や解任について、会社の業績等の評価を踏ま え、公正かつ透明性の高い手続に従い、適切に実行すべきである。

【補充原則 4-10① 】
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社 外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の 指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化する ため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮 問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。



 これらの項目は、(1)役員報酬制度の設計、(2)役員の指名/報酬決定プロセスの整備、(3)方針への落とし込み、(4)役員の人材要件と後継者育成計画策定という4つの領域に分類することができる。

日本企業の役員報酬は固定報酬比率が極めて高く、中長期インセンティブが極端に少ない

 では、欧米企業の役員報酬はどうなっているのだろうか。ベースとしたのは「日本と海外の役員報酬の実態及び制度等に関する調査報告書」(経済産業省)とデロイトトーマツ実施の「役員報酬サーベイ2015」だ。

 まず米国ではすべての上場企業(100%)が詳細な報酬ポリシーを策定しており、なおかつそれが開示されている。フランスでは94%、英国やドイツでは共に87%だ。

「これに対して日本では35%に留まっている。また50%の企業は報酬ポリシーを開示はしているが、有価証券報告書に記載した以外のものはなく、さらに15%は明文化された報酬ポリシーそのものがない。つまり日本企業の65%は、詳細な役員報酬のポリシーを持っていないということになる」

 また役員報酬は、一般的に固定報酬、賞与などの短期インセンティブと、ストックオプションなどの中長期インセンティブで構成されるが、米国では役員報酬の10%が固定報酬、22%が短期インセンティブ、67%が中長期インセンティブという構成になっているという。英国なら固定報酬36%、短期インセンティブ26%、中長期インセンティブ38%という構成だ。

【次ページ】各国の役員報酬の内訳はどうなっているのか
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