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- 2015/05/29 掲載
元スクウェア・エニックス CTO 橋本 喜久氏が語る、ゲーム開発はなぜ炎上するのか?
日本の教育を変える活動に参加し、後進の指導に力を注ぐ
橋本氏は東京大学工学部卒業後、1997年にセガに入社。2009年まで人気ゲーム「ソニックシリーズ」の開発に携わった。その後、スクウェア・エニックスのCTO/R&D部門長として全社技術の推進、さらにはオンラインRGP「FINAL FANTASY XIV」の技術ディレクターや、ハイクオリティなCG映像作品の「Agnls Philosophy」などを担当してきた。
ゲームの可能性を心から信じているという橋本氏は、その後2014年に独立・起業し、一旦ゲーム開発から離れて「LIBZENT」という会社も設立した。「仕事に活気を、人生に潤いを。」をテーマに、日本企業の生産性や生活の潤いに貢献する活動を中心に、コンセプトアートを展開している。このコンセプトアートとは、映画・ゲーム・CG作品などの世界観のヒントとなるようなタネを蒔く仕事であり、日本のクリエイティブを守り、育む活動である。
7つのマインドセットで、一流のゲームクリエイターを目指す
そんな橋本氏は、中学生・高校生向けのプログラミングキャンプ、スクールを実施するライフイズテックが主催するイベント「Edu×Tech Fes 2015」に登壇。ゲーム開発の未来に働く中高生に向けて大切な7つのマインドセットについて語った。同氏は、これまでの経験から「ゲーム開発は簡単に炎上する。その際の対処のためにも、マインドセットが重要になる」と次のように説明した。
「ゲーム開発が炎上するのは、他人事、おごり、非合理、脳死、いくじなしという主要因がある。炎上にはマインドの問題があり、それを前提とした方法論が必要だ。ゲーム業界には“井のなかの茹でカエルさん”が多く存在する。視界が狭いうえに、煮えたぎっている。そういうメカニズムが組織にも個人の心にも発生するため、不幸なカエルさんが増えないように、マインドセットが大切になる」(橋本氏)
同氏が、学生に示した大切な7つのマインドとは、以下の7つだ。
1. アイデアを生むのもクリエイティブ。アイデアを形に仕上げるのもクリエイティブ
橋本氏は、ゲームの完成度曲線のグラフを用いて説明した。ゲーム開発では、慣れている案件はすぐに完成度が高まるが、挑戦の多い案件はなかなか進捗せず、ラストで一気に完成度が高まる傾向がある。また作品を完成するには、試作の10倍以上も労力がかかるという。
「我々は確定させる恐怖と、確定させない恐怖のせめぎ合いで仕事をしている。開発段階でゲームの設定を決めてしまうと、後戻りできなくなるため、可能な限り先送りしようという気持ちが働く。そうなると逆にスケジュールがグダグダになる恐怖もある。そこで重要な点は、創造力より想像力を働かせ、ある程度イメージが見えるようなビジョンを持ったほうがよいということ。自分の能力と向き合い、終わらせる勇気をもつことが大切だ」(橋本氏)
2. 誠実に物事を進め、信頼の複利を積み重ねよう
橋本氏は「もし、ある人にアンパンを買ってきて」と言われたらどうするか? という比喩で説明した。普通であれば、そんな子供のお使いのような仕事は嫌だと思うが、橋本氏は次のように語った。「しかし託してくれたことに対し、いかに返すかということが重要。そんな仕事をしたくないと思っても、ちゃんとやって信用を得てから、次の仕事をゲットする。アンパンを買うことすらスムーズにできない人に、もっと大きな仕事は頼めないからだ。そのうえで、とにかくアウトプットして、入魂の一発を出して創りきる。信用をもらって大きく返す。この積み重ねが必要だ」(橋本氏)
3. 何を得られるかの前に、何を与えられるかを考えよう
たとえば挨拶には2つのパターンがあるという。1つは、相手が気持ち良くなるポジティブ・スパイラルが働くもの。もう1つは、気まずいから行うというネガティブ・スパイラルの挨拶だ。「人に優しくするのもの同じこと。嫌われたくないから人に優しくすることと、本当に相手を慮って優しくすることは、表面上は同じでもまったく異なる行動原理だ。仕事も名声を得るためにやるものではない。相手に何かしてあげられることを頑張れば、結果的に名声がついてくる」(橋本氏)【次ページ】プログラミングは働く際の武器、そして人生の彩りである
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