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- 2015/04/28 掲載
掘って流せば“金”が生まれる:人を動かす極意
むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意
金沢のルーツとなった男の生き様とは
昔々、加賀の山科(金沢市郊外)に、山芋を掘って生計を立てている藤五郎という貧しくても礼儀正しい若者がいたのだという。
ある日、大和の国(奈良県)から、藤五郎のもとに生玉方信(いくたまほうしん)という信心深い長者が美しい娘を連れて訪れ、「夢で観音様のお告げがあったので、娘を嫁にしてほしい」と言うのだ。藤五郎は断ったが、長者は聞き入れず、娘(和子・わご)を置いて帰ってしまった。和子はたくさんの小判を持って嫁いだが、藤五郎はその価値が分からず、貧しい人たちに分け与え、すっかり無くなってしまった。生活は藤五郎が掘った山芋と食料品の物々交換。あまりに貧しい暮らしに和子は戸惑うが、藤五郎の人柄に惚れ込んでいたことから、実家に帰ることも無く仲むつまじく暮らしていたのだという。
それを見かねた大和の実家から砂金が入った袋が送られてきた。和子は喜び藤五郎に、食べ物や着物の買い物を頼んだ。
買い物に行く途中、藤五郎は通りかかった田んぼで雁の群れを発見。和子に食べさせてやろうと捕ろうとするが、投げる石が見つからない。そこで持っていた砂金の袋を投げつけてしまった。結局、雁は獲れずに投げた砂金袋もどこへやら。しかたなく手ぶらで帰った藤五郎から経緯を聞いて愕然とする和子。「あれだけのお金なのに、ほんと勿体無いことをして」と思わず怒ってしまった。藤五郎は相変わらず、砂金の価値が理解できず、和子が怒る理由も分からない。そして和子にこういった、「あんなものは芋を掘るといっぱいついてくるんだがなあ」と。
それを聞いた和子は疑いつつも、藤五郎の案内で芋掘りに出かけた。掘った芋を近くの泉で洗ったところ、清んだ水に金色の粒がキラキラと光るのが見えた。和子は藤五郎にそれが砂金であることを教え、その価値も説明した。藤五郎と和子は、たちまち大金持ちになったのだが、二人は独り占めにはせず、貧しい人たちに分け与えた。そして、貧乏暮らしも以前のまま。しかし、周囲からは"芋掘り長者"と、呼ばれ、尊敬されるとともに幸せに暮らすという物語である。
この藤五郎が芋を洗ったという沢が「金城霊沢」となり、1000年以上経った現在も彼は「金沢を作った神」として多くの人々に崇められている。そして、今回の北陸新幹線開通で、その名声は全国に知れ渡ることは間違いない。
【次ページ】現代版「芋掘り長者」の活躍で会社が復活
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