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  • 2015/02/10 掲載

川口盛之助氏インタビュー 「世界人口が100億人になったら日本化せざるをえない」

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さまざまな社会課題を抱える日本。日本の未来はどうなるのか?前編では、日経BP未来研究所アドバイザーの川口盛之助氏に2030年までのメガトレンドを聞いた。社会科学の分野では人の働き方が変化し、自然科学の分野ではバイオと脳が注目分野だという。後編では、日本のものづくりがどうなっていくのか?また、世界の中で日本はどのように戦っていくべきかについて話を聞いた。

ものづくりのオープン化が進めば小さい組織が救われる

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日経BP未来研究所アドバイザー
株式会社盛之助 代表取締役社長
川口盛之助氏
──これまで日本が得意としていた製造業の分野はどうなるでしょうか。

 部品がどんどんコモディティ化すれば、重要になるのは、部品を組み合わせて新しい価値を生み出すことだけになります。パーツやツール、ライブラリがたくさんあって、それを組み合わせてモノを作るレゴのブロックのようになるわけです。しかも、どんどんショートサイクルになって、小ロットになっていく。これはつまり、ロングテールそのものです。

 3Dプリンタがわかりやいと思います。3Dプリンタはオープン化された生産装置です。生産技術そのものがオープン化されたわけですから、あとは「何を作るか」だけで競うことになります。

 イケアなどもそれに近いかもしれません。設計図と必要最小限の部品だけが送られてきて、現地で組んでくださいというわけですね。もしかしたら、部品の一部は家庭や近くのホームセンターのようなところで現地調達してくださいとなるかもしれません。その方が梱包も楽ですし、配送も早い。効率がいいのです。

 それがオープンなモノ作りの世界です。なぜオープンかというと、稼働率が高いからです。稼働率や流動性、回転率は、会社経営の1ページ目にのっている概念ですね。

──しかし、そういったモノ作りの世界が到来して、人は幸せになれるのでしょうか。

 なれますよ。なぜなら、大企業は10台しか売れないようなモノは絶対に作らない。しかし、オープンなモノ作りの世界では、年に10台売れれば十分という会社でもやっていけます。製品を組む装置や材料かすぐに手に入れば、あとはアイデアと誰が組むかだけですから。

 それには、日本の大企業が抱えている膨大な特許はぜひオープンにすべきだと思います。大企業には、ライバルの開発を阻害する目的のためだけに取得した不毛な防衛特許が山ほどあります。そのせいで、アイデアの稼働率が非常に悪いのです。優れた企画書も死蔵文書と化して山積みになっています。すべてをオープンにして、大企業は3割とかいわないで、1厘くらいのマージンをとればいい。

 そうすれば、多くの人がロングテールのプロシューマになれます。アイデアがあり、必要なリソースがすべてオンデマンドで手に入り、お客さんのリストがあれば、小さい組織が救われます。

──ソフトウェアの世界で起きていることが、現実の世界で、即ちハードウェアでも起きるということですね。それでは大企業はどうなるのでしょうか。

 大企業はプラットフォーマ―として最大公約数的なところで技術を磨くことになります。モノ作りがオープン化しても、パーツは必ず必要になりますから。

オープンな世界ではレイトスターターほど黄金期は短い

──中国や韓国などの新興国の動向はどう見ていますか。

 中国に関しては、労働人口が頭打ちになって、今後、オーバーヘッドがどんどん重くなっていくので、厳しいのではないかと思います。韓国も苦しんでいますね。

 そもそも、オープン化がすすむと、人も活発に動きますから、これまで10年かかっていたものが、どんどんドッグイヤーになり、コモディティ化していきます。日本がアメリカに追いついて、そのあと韓国、中国など新興国が成長すると言われてきましたが、そもそもレイトスターターほど黄金期は短いのです。早く追いついたということは、自らはもっと早く追いつかれることを意味しているからです。韓国も日本に対して比較的容易に追いつける部分はもう使い果たしてしまった感があります。その部分は中国やアセアンに追いつかれるのも時間の問題です。

 あとになるほど、ケーススタディが多く、ベンチマークをとる手法も確立してくるので、まねをするのが容易になります。しかもオープンになっているので、人も資本も簡単に動く。すると、あっという間に城郭はできるのですが、滅びるのも早い。すぐに追いつかれるのです。

 その意味では、日本は恵まれていました。明治時代からコツコツやってきたので、町工場のような産業集積を作れたのです。この蓄積は大きい。ゆっくり成長できた最後の新興国、そして最後の先進国が日本かもしれません。

【次ページ】サステナブルな世界では、世界が日本化せざるをえない
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