- 会員限定
- 2014/12/22 掲載
大日本印刷 池田敬二氏、国際大学GLOCOM 境真良氏、ヤフー 志村一隆氏が著作権を語る
オウンドメディアからオウンド“ワールド”へ
定額読み放題とフリーミアム戦略がで変わる出版業界
大日本印刷の池田氏は電子書籍の定額読み放題サービスが増加した背景について「コンテンツホルダーが従来とは異なる読者層との接点を持ちながら、販路拡大に結びつけようというねらい」があると指摘する。
池田氏は、手塚プロダクションが小売店や飲食店、公共施設向けに展開している取り組み事例を次のように紹介した。
「これは、スマホやタブレットから、Wi-Fi経由で同社の『TEZUKA SPOT』に接続すると、手塚治虫の約400巻分の作品が読めるサービスです。すでに寿司チェーン くら寿司の全店舗や、公共図書館など500カ所で導入されています」(池田氏)
また電子書籍ならではプロモーションとして「フリーミアム戦略」と呼ばれる手法も登場した。
「これはもともと作家の五木寛之氏が若い人たちに自分の作品をもっと読んで欲しいという要望がきっかけだったと言われています。自身の長編小説『親鸞(講談社刊)上巻』を期間限定で無料で全て公開したところ、上下巻ともに書店での売上が25%増加したのです」(池田氏)
このようなフリーミアム戦略の決定打となったのが、佐藤 秀峰氏の漫画「ブラックジャックによろしく」だ。こちらは著作権フリーで全巻の無料で配信され、広告に利用されたほか、印刷物の束見本などにも使われた。続編の「新ブラックジャックによろしく」は1巻170円で配信され、売上げを伸ばした。
直近では、無名新人(夜宵草)の学園漫画「ReLIFE」が40万部を売上げ、アマゾンの書籍ランキングで1位を獲得。本作品は漫画アプリ「comico」において連載され、ツイッターやLINEとも連携していた無料作品だが、紙の単行本でも大成功した。
「『無料なのに、なぜ有料の単行本を買うのか?』と疑問に思うかもしれないが『本当に大好きな作品ならば、お金を払っても手元に置いておきたい』というファン心理が働いたからだ」と池田氏は分析する。
同氏は、もう一つ著作権にまつわる面白い話題として、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラ氏の写真について取り上げた。
「街中で、彼の顔写真がプリントされたTシャツを見かける機会も多いですが、その大きな理由は、彼を撮影したカメラマンと、アート作品に仕上げた芸術家が著作権を放棄したため。それが反体制のアイコンとして世界に広がったのです」(池田氏)
ヨーロッパは、国力という観点からデジタルアーカイブに注力しており、2008年にEUの巨大電子博物館プロジェクト「ユーロピアーナ」を立ち上げた。すでに3000万点もの文化遺産がデジタルで公開されている。
フランスではデジタル化に1000億円の投資を表明しているが、日本でも同様の構想が発案されている。実は黄金期の戦前映画は、現在わずか10%残るのみだという。そのため池田氏は「アーカイブ立国を目指すなら、いますぐ動き出すべきだ」と力説した。
【次ページ】オウンドメディアはオウンドワールドになる
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR