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蓄積されたビッグデータを活用し、新たなビジネスを生み出すツールとしても、クラウドは多くの企業から注目を集め、活用が進められている。セブン&アイ・ネットメディアの鈴木康弘社長、リコーの石野普之理事、みずほフィナンシャルグループのIT・システム企画部審議役である森岡道博氏らが、各社のクラウドやビッグデータへの取り組みについて語るパネルディスカッションが行われた。
情報システムのデータの90%は2年以内に発生
10月22日から23日にかけて開催された「Oracle Days Tokyo 2014」で行われたパネルディスカッションでは、「クラウドで何が変わる? ビジネスとITのこれから」と題して、企業のクラウドの導入目的や活用事例などが紹介された。
パネリストは、セブン&アイ・ネットメディア 代表取締役社長の鈴木康弘氏、みずほフィナンシャルグループ IT・システム企画部審議役 兼 みずほ情報総研常務取締役の森岡道博氏、リコー理事経営革新本部副本部長の石野普之氏、NTTコミュニケーションズ理事クラウドサービス部ホスティングサービス部門長の関洋介氏、日本オラクル社長の杉原博茂氏。日経BP社執行役員イノベーションICT研究所所長の桔梗原富夫氏が進行役を務めた。
セブン&アイグループのIT戦略を担う鈴木氏は、「クラウドは経営改革のスピードを上げる手段として必要だ。セブン&アイグループは、実店舗とネットショップを連動させるオムニチャネル戦略を進めており、クラウドがその基盤になっている」と説明する。
NTTでは130カ所のデータセンター(東京ドーム5個分)インフラを所有。2010年に「クラウドビジョン」を発表しており、15年には次世代型クラウドの基盤を構築する計画という。関氏は、「組織のガバナンス(統治)のために、クラウドを使うというユーザーが増えている」と明かした。
一方、クラウドを全面的には導入していない企業もある。リコーの石野氏は、「クラウドは経営の手段であって、目的ではない。当社の情報システムは、さまざまなタイプのITを組み合わせたハイブリッドモデルで、その中で、適材ならクラウドを採用する」との姿勢だ。
みずほの森岡氏は、「顧客ニーズに迅速に対応するためにクラウドを活用しているが、業務の特性上、高度の情報セキュリティを求められることから、今のところ、プライベートクラウドの域に止まっている」とした。
情報システムの内製化を進めるセブン&アイ
また、セブン&アイは、世界のグループ店舗の買い上げ客数が1日約5700万人にも上る。そこで、クラウドによって、その膨大な顧客情報を試験的に活用しているという。「顧客情報についてはプライベートクラウド、社内業務ではSaaS系を使っている。(オラクルのパブリッククラウドは)社内システムとの親和性が高いのも利点だ」(鈴木氏)。
さらにセブン&アイは今後、情報システムを内製化していく考えだ。
「雨が降ったら、店頭に傘をサッと並べるのが小売業。これからはITをベースに、そうした品揃え、売場作りをしていかなければならない。そのためには、社内のITのレベルも高めなければならない。米国には約3000万人のITエンジニアがいるが、その70%は一般企業に属しているという。ところが、日本には約1000万人のITエンジニアがいるが、一般企業に属しているのはまだ25%に過ぎない。一般企業のIT武装は進んでいくだろう。セブン&アイとしても、ITエンジニアの採用と育成を進める」(鈴木氏)。
約100社のグループ会社があるので、グループ内のDBを共有化するアプリなどを開発するという。「情報システムはPB(プライベートブランド)商品と同じ。PBが売れると利益貢献度が高いし、差別化にもつながる。情報システムは一から自社開発するのではなく、ベンダーとのコラボレーションでパーツを集めてきて、自社に最適化するよう統合する」(鈴木氏)方針だ。
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