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  • 2014/09/24 掲載

日本のスタートアップ企業がグローバル活躍するために~欧州と中東に学ぶ

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先進国におけるアントレプレナーシップのランキングを見ると、世界でも投資が進んでいるトップ3強は米国、カナダ、オーストラリアだ。しかし日本は36位と非常に低い位置にある(Global entrepreneurship development index 2014調べ)。スタートアップというと、どうしてもシリコンバレーに目が行きがちだが、最近では米国以外でもベンチャーが台頭している。たとえば英国(10位)、イスラエル(21位)、北欧(スウェーデン4位、デンマーク5位、フィンランド8位)では、新しい先進的な企業が数多く生まれている。先ごろ開催された新経済連盟・NES2014では、ヨーロッパや中東を中心に活躍するベンチャー・キャピタリスト、アントレプレナー、政府関係者が集まり、EU圏におけるスタートアップ企業の強さの秘訣について話し合った。

世界のハイテク産業を呼び込むイスラエルと、どこでも起業が可能なことを証明したViber

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Vertex Venture Capital
マネージング・パートナー
デイビット・ヘラー氏
 まずイスラエルを代表するベンチャー・キャピタル・Vertex Venture Capital(以下、Vertex) において、マネージング・パートナー を務めるデイビット・ヘラー氏が、同国の企業家精神とイノベーション・カルチャーについて述べた。デイビット氏は、主にアジアの投資家から資金を調達し、投資先のアジア市場で事業を支援してきた。同氏は、かつて京都大学で法学を学んだこともあり、日本とイスラエルをつなぐキーパーソンとして活躍している人物だ。

「実はLP投資家の企業リストには、名前を明かせない日本企業も数多くある。彼らが投資をするのは、キャピタルゲインだけが目的でなく、新しいテクノロジーに対するアクセスが持てるという戦略的な価値があるからだ。とはいえ、キャピタルゲインを大きくする意味では、日本からの投資があったから成功したという側面もあるだろう」(デイビット氏)。

 1997年のローンチ以降、Vertexは108社に投資し、30社以上がIPOを果たした。直近で同社がM&Aで成功した企業に挙げられるのがWAZEだ。デイビット氏は「WAZEはコミュニティベースのリアルタイム・トラフィックとナビゲーション・モバイル・アプリケーションを開発していた企業だ。我々が2008年に投資したときは、ユーザーも少なく小さな企業だった。その後Googleに10億ドル以上で売却された際は、世界で5000万人のユーザーが付くほどになっていた」と振り返る。

 ご存知のとおり、イスラエルは人口が800万人しかいない小国である。面積は日本の四国と同じくらい。天然資源もまったくなく、市場規模も小さいため、最初からグローバルを視野に海外展開を考えていく必要があった。「ハイテク関連のスタートアップ企業は、現在700ぐらいあり、我々のようなベンチャーキャピタルが、多くの資金を投入している。イスラエルは、スタートアップ企業に対して、世界で最も投資をしている国(一人あたり)だ。その結果を受けて成功している企業も多い。たとえば、NASDAQへ上場した企業数は米国に次いで2位だ」(デイビット氏)。

 さらにイスラエルには興味深い点がある。多くの多国籍企業が、R&Dの中心的な開発拠点にイスラエルを選んでいるということだ。その大半が現地の企業を買収し、その後にR&Dセンターを開設している。たとえば、Apple、Facebook、CISCO、Google、IBM、Microsoftなど誰でも知っている企業が、イスラエルにR&Dセンターを持っている。「楽天に買収されたViberも、ある意味ではイスラエル企業といえるだろう(イスラエルに登録されていないが、CEOのタルモン・マルコ氏はテルアビブ大学を卒業している)。イスラエルではハイテク関連の人材数もナンバーワンだ。人口あたりの科学者の数は最も多く、R&D投資もGDP比率で4%以上と世界で最高だ」(デイビット氏)。

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先進国におけるアントレプレナーシップのランキング(Global entrepreneurship development index 2014調べ)。最近では米国以外で、英国、イスラエル、北欧で先進的な企業が数多く登場

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Viber CEO タルモン・マルコ氏。同社は先ごろ、楽天に買収されたばかりだ
 続いてプレゼンを行ったのは、デイビット氏のプレゼンで話題に上がったViberのタルモン・マルコ氏だ。同氏は、「先ごろViberは楽天に買収され、日本企業になった。そして日本に対する見方もユニークになった」と心境を吐露。

 Viberはイスラエルとベラルーシがメイン拠点であり、そこからグローバルなコンシューマ向けブランドを確立した。「先般、ミャンマーに滞在していたとき、そこで我々のモバイル端末向けプラットフォーム・Viberが使われていた。すでにミャンマーには数百万人のユーザーがいる。グローバルでは3億人のユーザーがいるが、これはまさにインターネットの力といえるだろう」(タルモン氏)。

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モバイル端末向けプラットフォーム・Viberの画面。グローバルで3億人のユーザーを有する。フィリピンやミャンマーなどASEAN地域で人気が高い

 またタルモン氏は、「マーケティングで多額の宣伝費を使わなくても、有能な人材さえいればグローバルな展開が可能になった。Viberが成功した要因は、優れたテクノロジーだけではなく、世界中のコンシューマにとって身近なコンテンツで、ライフスタイルを変えるものだったからだ」とViberのヒットの要因を分析した。

【次ページ】東京の半分の人口に満たないフィンランドと、政府主導の投資大国・イギリスの活躍
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