- 2013/11/12 掲載
IBM、ケニアでイノベーション支援 アフリカに初の基礎研究施設を開設

広さ2,000平米の施設にはクラウド・コンピューティング・ハブが設置されており、IBMの研究員たちはこの計算資源を用いて膨大な量のデータを分析し、洞察を引き出し、エネルギー、水資源、交通、農業、医療、ファイナンシャル・インクルージョン、治安など、アフリカが抱える重要課題に対する解決策を探っていく。
当研究所の研究課題のひとつにコグニティブ・コンピューティング技術の開発がある。これは学習能力と推論能力を融合して、医療提供や金融サービスなどの分野において、専門家がより的確な意思決定を行うことを可能にするための技術になるという。
具体的には、現在、下記の2つのプロジェクトが進行しているという。
Twende Twende(Let's Go:レッツ・ゴー)
アフリカでは、今後15年間に85%もの拡大が予測される都市を複数抱えている。都市システムへの負荷が増大するなかで、IBMは治安や人間の移動など、相互に要因が絡み合った都市問題の解決策を探求しているという。
政府の推計によると、交通がナイロビに与える損失は一日当たり60万米ドルで、この深刻化する問題に取り組むため、IBMはケニアのインターネット・サービス・プロバイダー、Access Kenyaと協力し、ナイロビにおいて車で通勤する人々が、交通渋滞の予測に基づいた市内運転ルートに対する助言を携帯電話で受信するパイロット・ソリューションを開発した。
ナイロビ市内各所に設置されたCCTVカメラから取り込まれた映像データを解釈する特別なアルゴリズムとディープ・アナリティクスを活用することにより、通勤する市民は携帯電話を用いて道路の最新状況と代替ルートの助言を受信する。
現在ナイロビに設置されているCCTVカメラは36台に過ぎないが、IBMの研究員は、数学的ネットワーク分析によって得られたデータを補強し、市内のデータが提供されない地区の交通状況についても予測している。
「Twende Twende」(スワヒリ語で「レッツ・ゴー」の意)と呼ばれるこのシステムは、従来型の携帯ではSMSベースのクエリ・システムを介して稼働する。また、スマートフォンでは、ユーザーは専用アプリを使って、推薦されたルートや渋滞状況を示す市内地図を閲覧することができるという。
IBMの研究員は現在ソリューションの機能拡張に取り組んでおり、今後は治安や天候、道路工事などの情報を追加し、現地の事情に特化して、人間の移動に必要な情報を取得できるようにしていく予定。
IBMは、ナイロビの通勤者に対してこのサービスの公開トライアルを開始しており、現地の大手携帯電話ネットワークであるSafaricomおよびAirtelで利用できる。
Mattangazo(デジタル広告)
アフリカの多くの都市では、人々の日々の通勤手段について、公共のバスや小規模な民間ミニバスの複雑なネットワークに頼っている。
ナイロビでは、マタトゥと呼ばれるミニバス6万台が、市の公共交通機関利用者83万人の3分の1に当たる人々を乗せて走り回っている。最近、デジタル時代への対応として、市内を走るマタトゥに車内無線LAN(WiFi)を導入する取り組みが始まっているという。
IBMは現地企業FlashcastおよびKuza Biasharaと協力し、マイクロ起業家が通勤客をターゲットにロケーション・ベースの広告を実現するソリューションを開発した。このソリューションは、バスやマタトゥに3G通信機能を備えたGPS対応ディスプレイ・ユニットを設置し、レストランや美容室、コンピューター修理店など、地元の小規模企業のシンプルな広告を表示する。
IBMの研究員は、小規模企業が広告のスローガンやメッセージをアップロードできるアプリを開発。現在、アナリティクスをどのように用いて営業登録などの派生ビジネスの創出ができるかについて研究しているという。
ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領は「この研究所の設立は、ケニアで既に利用可能なイノベーションのエコシステムに対するケニア政府のコミットメントを示すものです。イノベーションを活用して国産のソリューションを振興することで、ケニアはアフリカ大陸におけるICTをこれからも主導していきます。世界屈指の優秀な人材を有し、強力なテクノロジーを駆使してアフリカのいくつかの最も困難な課題に対するソリューションが開発される先進的な研究施設の存在により、ケニアひいてはアフリカが恩恵を受けることを政府として誇りに思います」との声明を発表している。
アフリカの重要課題、機会とIBMアフリカ研究所の役割に関する動画
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