- 2013/08/28 掲載
NICT、テレビ放送帯で通信できるAndroidタブレットを世界に先駆けて開発

以前開発されていた据置型基地局(右)
スマートフォンやタブレット端末が爆発的に普及し、動画視聴など、大容量通信の要求がますます高まる中、周波数資源のひっ迫問題が深刻化している。その解決方法の一つとして、テレビ放送帯(470~710MHz)におけるホワイトスペース(テレビ帯ホワイトスペース)の活用が検討されており、米国や英国などでその運用に当たって制度設計が始まっている。
NICTは、このテレビ帯ホワイトスペースを活用するために、これまでもテレビ帯ホワイトスペースで運用可能な基地局および据置型端末の開発を行っていた。
今後、携帯型の端末でのホワイトスペースの利用が可能になれば、周波数資源の有効利用が期待できるが、対象とするテレビ帯ホワイトスペースでの運用周波数が従来の周波数(2.4GHz)よりも低く、かつ帯域も広いため、部品や回路規模の小型化が難しいという問題があった。また、テレビ放送への干渉回避技術を実装する必要もあり、携帯サイズのホワイトスペース機器開発は困難だった。一方で、テレビ帯ホワイトスペースの利用を検討するためには、実運用を想定した伝搬特性評価が必要だった。
こうした中NICTは、UHF帯での通信が可能な携帯型Androidタブレット端末を世界に先駆けて開発した。本端末は、新たに開発したテレビ帯ホワイトスペースで動作させることのできる周波数変換装置を市販のタブレット型端末に内蔵したもの。

既存の無線LANシステム(IEEE802.11b/g)の技術を活用した移動通信システムとして、2.4GHz帯およびテレビ放送帯のいずれでも通信可能で、ホワイトスペースにおいてはNICTがこれまでに開発したホワイトスペース無線LAN基地局を介してインターネットへのアクセスが可能になる。
また、この携帯型タブレット端末は、NICTが開発したホワイトスペースデータベースにアクセスすることで、テレビ放送に干渉を与えないと考えられる周波数での運用が可能になるという。
また、ネットワークマネージャからの制御により、トラフィック量や干渉量に応じて自動的に最適な周波数を選択する。
そのほか、本携帯型タブレット端末にはホワイトスペースデータベースから一次利用者(テレビ放送)の情報を取得し、テレビ放送帯の各チャネルのホワイトスペースの状況および端末の現在地を同時に地図上に表示する機能や、場所や時間によるホワイトスペースの状況により、端末からの出力レベルを制限する出力レベル調整機能を備えているという。
ホワイトスペースにおける移動通信の利用には課題が多く、実運用の実現に向けては、テレビ放送への干渉を確実に回避するためのホワイトスペース判定方法の策定が必要となる。
NICTでは今後、本端末を用いて伝搬特性評価などを行い、技術基準および制度設計に資する情報を提供していく予定。一方で、テレビ帯ホワイトスペース利用の通信規格の標準化活動に引き続き貢献するとともに、社会還元を見据え、今回開発した端末の要素技術などを応用し、これらの通信規格に準拠した小型携帯端末の開発も同時並行で進めていくという。
関連コンテンツ
PR
PR
PR